「いっぷくしませんか。」農作業の手伝いで10:00 と15:00に15分ずつの休憩時間がある。飲み物やお菓子を食べながら農家の人と世間話をする。 “いっぷくは煙草の一服が語源だろう。
この死語になりつつあるような言葉を聞くと、地べたに座って、煙管の煙をくゆらせ、ふーっと息をする馬車追いの姿が浮かぶ。
育った炭鉱には運搬使役用の馬がいた。夏は大型の大八車を曳いて筵や樽などの荷物を積み、冬は橇に積んだ暖房用の石炭を家々に運んでいた。
「馬車追い」は、夏は手ぬぐいでねじり鉢巻き、冬は黒い目出し帽を被り、悪ガキどもには結構〝おっかない〟オヤジ達だった。通学の時に橇の後ろに掴まって乗ろうものなら石炭を投げられ、言うことを聞かないと長い皮の鞭が飛んできた。
そんな馬車追いのオヤジ達が優しい眼差しを見せる時があった。道端で“いっぷく”している時だった。仕事の段取りのこと、家族のこと、人生のこと・・・、今にして思えば考えていることが煙となって風にゆらゆら登っていたのかもしれない。
久し振りに“いっぷく”という言葉を聴いて、ほのぼのした気遣いと温もりを感じる。この週末はひと息入れて来週は田植え完成だ。
《イネの苗ハウスにいたトノサマ?蛙 保護色になっている。 2020.5.22》