作業療法士が行う特殊スイッチ支援について
-ピルケーススイッチ編-
当院には筋ジストロフィーの患者さんが多数長期療養入院されています。筋ジストロフィーは、遺伝子の変異によって体の筋肉が徐々に壊れ、進行性の筋力低下を認める遺伝性の疾患です。病気の進行により、徐々に自分で行えることが少なくなり、受動的な生活に移行していきます。
しかし、体のどこか一部分を動かすことができれば、代替手段にてナースコールやスマートフォン・パソコン等の情報通信機器の操作が自力で行えるようになります。代替手段の1つとして、特殊スイッチを利用した操作方法があります。我々作業療法士は患者さんの身体状況・希望・環境等を考慮し、特殊スイッチの選定や試用、スイッチ操作環境の調整等を日々行っています。
今回は当院の患者さんが使用しているスイッチの中でも使用頻度の高いピルケーススイッチについてご紹介させて頂きます。
- ピルケーススイッチとは
メーカーは“有限会社TY企画“さんで、購入方法は“TY企画のネットショッピングページ“を開いて確認してみて下さい。また、“魅惑の機器ルーム“のページを開いて頂くと、ピルケーススイッチの後継スイッチの詳細についても確認することができます。価格は2000円程度です。スイッチ動作は弱い力でも作動可能で、押した時にオン、離すとオフになります。一番の特徴は、操作力の異なる“FK014“、“FK015“、“FK016“シリーズがあるため、患者さんの操作力や希望に合わせたスイッチを選択することができます。
- どんな時に使用する?
基本的には意思伝達装置や情報通信機器の操作スイッチとして使用されています。当院では情報通信機器以外にナースコールやテレビ・レコーダーの操作としても使用されています。スイッチの作動部位は手の指が一番多いですが、下の写真のように足の指で使用している方もおり、作業療法士がスイッチの導入前に患者さんがスムーズに動かすことができる部位を評価し、スイッチを作動する部位の選定や必要に応じてスイッチの操作環境の調整を行っています。
- 作業療法士が行うスイッチ操作環境の具体的な調整内容について
患者さんの中には少しの手の位置のずれや持ち方によってスイッチの作動状況が変化するため、下の写真のようにクッション等を利用した手の位置調整、スイッチの持つ向きを患者さんの身体状況や希望に合わせて調整しています。
また、スイッチの加工も行っています。下の写真のようにピルケーススイッチの蓋の内側に針金(クリップを伸ばして切った物)やクッションを付けて作動圧を軽くする、滑り止めや輪っかを付けてスイッチを持っている時に位置がずれないように工夫しています。
- 最後に
今回はピルケーススイッチに限定してお話させて頂きましたが、スイッチには様々な種類があるため、各々のスイッチの作動方法や特性等を把握しておくことが大切です。また、情報通信機器や意思伝達装置を操作するためには、スイッチだけでなく、スイッチと機器を繋げるスイッチインターフェイスが必要であることも知っておくと良いかと思います。
最後に私からこの記事を一読して下さった皆さんへ「皆さんの身近に病気の進行によって受動的な生活を余儀なくされている方はいませんか?」という質問を投げかけたいです。ここからは私の個人の意見になりますが、進行性疾患の方と関わる際に大事なことは、支援者側が限界を決めないで最後まで諦めずに親身になって寄り添うことが一番大切だと思っています。何をすれば分からない時は、まずは積極的にコミュニケーションをとり、その方の想いや意思を汲み取る所から始めてみて下さい。今回のお話が少しでも皆さんのお役に立てることを願っています。
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【注意】
本ブログの掲載記事は,個人的な見解を含んでおり正確性を保証するものではなく,
当院および当科の総意でもありません.
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