東埼玉病院 リハビリテーション科ブログ

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免荷式歩行器POPOの使用感

2022年09月02日 | 紹介

皆さんこんにちは!

東埼玉病院リハビリテーション科です!

近年、リハビリテーション分野では歩行訓練を支援するロボットや機器の開発、病院などの臨床現場への導入が進んでおります。

当院でもリハビリテーション支援機器を複数導入しておりまして、2021年3月に導入した「免荷式歩行器POPO」について前回は紹介しました。

 

 

今回はPOPOの使用感についてお話していきたいと思います。

【注意】

・今回の記事は一個人の考えであり、必ずしも正しい情報とは限らないものとする。

・今回の記事は必ずしも結果を保証するものではない。

・今回の記事の情報について、使用は可能ですが、いかなる場合も当院では一切責任は取らないものとする。

・今回の記事でのいかなる場合も、当院は一切の損害賠償を支払わないものとする。

 

↓本題↓

前回と同じ説明ですが、復習として、、。

 

【免荷式歩行器POPOとは】

POPOは、免荷式リフトを備えており、ハーネスを骨盤と大腿部に装着しベルト部分に取り付けることで、身体を吊り上げ、下肢にかかる荷重を免荷する機能があります。

簡単に伝えると、一人で立てない・歩けない患者さんもPOPOを使用することで動作の幅が広がるのが特徴です。

 

【POPOのメリット】

一般的に理学療法のガイドラインでは入院初期からの離床訓練を推奨されており、POPOは免荷という特性から筋力低下をきたした患者さんや姿勢反射障害の患者さんに対して、漸化的に過重負荷をかけたり、姿勢保持の補助をすることが出来ます。

パンツ型ハーネスの関係上骨盤が前傾位になりやすく、体幹のUprightが促しやすくなるのは好印象です。

 

【POPO免荷量について】

どんな状態でも免荷して動かせばよいという訳ではなく、

参考文献より

「免荷量の増大により,立脚初期に得られる適切な床反力が失われると考えられ,ヒールロッカー,アンクルロッカーの機能を失わないためには免荷量40%は効果的でない可能性がある.」「体重の免荷量は体重の30%とした.」

以上の文献を参考とし免荷量30%を目安に臨床場面ではPOPOの使用しています(個人的に)が、患者さんによって50%程度から初めて漸化的に免荷量を減らしているのが現状です。(患者さん自身の慣れの問題もありますので)

 

【POPO使用時の注意点】

前述の文献にもありますが、床反力が顕著に失われている様子が見える部分もあり、特に吊り上げによる免荷を行うと身体が浮きやすくなる印象です。

そのためPOPOを使用すると水中のように踵接地よりも足尖接地になりやすくなりますので、口頭指示で踵接地を促す必要があります。

LLB着用時は踵接地するように介助するため、口頭指示は「胸を張って!」と体幹のUprightを促しながらリハビリを行っています。

 

【POPOの効果】

参考文献より、

「脳卒中急性期において早期立位、歩行は強く勧められている。近年、体重免荷式歩行が結果を残している.」

「免荷式歩行器(以下POPO)は、重症例に対する早期離床の為のツールとしての役割や、効率的な運動学習の一助になるとして近年注目が高まっている.」

「急性期、本機器による早期歩行が機能回復を促進させるメカニズムに影響を及ぼしたかもしれない.」

「超高齢片麻痺患者に対し、早期よりPOPOを使用した基本動作練習を行うことで、能力障害を軽減する可能性が示唆された.」

「体重免荷式歩行器(以下POPO)を使用した歩行は両側性の感覚入力の促進や脊髄レベルのパターン発生器の駆動による効果が期待される.」

「免荷式歩行器歩行は通常歩行よりも歩行速度や対称性が改善し、より規制的となっていることから効率的な歩行を学習出来る可能性がある.」

「POPOとKAFOを使用した歩行訓練では麻痺側下肢の振り出し時の痙性抑制を目的に使用できると考えれる.」

 

以上をまとめるとPOPOには早期離床を手助けするだけでなく、早期歩行により機能回復が認められる他、免荷により偏った姿勢にならないため対照的な動きが獲得しやすくなると考えられる。

また日本の少子高齢化に対して、リハビリのニーズが高い高齢者に対しても有効的であると考え、当院のような回復期病棟を持つ病院で、適応の疾患であれば、積極的に使用することが望ましいと思われます。

実際の使用感については、覚醒が乏しい患者さんであってもPOPOを使用し、全介助であっても歩行練習を繰り返し行うことで覚醒があがることもありますし、免荷による安心感なのか、実際に吊るされていることで接触面積が広く安定するのかはまだハッキリとしていませんが、両側的に偏りなく歩行が出来るため、対照的な動きが獲得しやすくなる印象があります。

そのため、片麻痺患者さんや超高齢者の方に対しても、POPO使用時の歩行練習時には踵接地や体幹のUpright(直立)の意識を促しながら、リハビリが行えており、個人的に満足しています。

 

またPOPOは汎用性も高く、免荷だけでなく、抵抗を加えながら進むように出来るという前方負荷という設定もありますし、股関節の運動範囲を制限した状態で歩行練習したい場合は免荷のみ、股関節の運動範囲を確保しつつ足関節運動範囲をさらに向上させたい場合は前方負荷で歩行練習を実施することも可能で、その有効性も示されています。

 

【免荷式トレッドミルとの比較】

脳卒中片麻痺患者に対するトレッドミルの有効性は既に報告されていますが、一方で免荷式トレッドミルは設置場所が限定され、一度設置されると移動が困難といったデメリットが存在します。

当院にも免荷式トレッドミルもありますが、POPOは免荷式トレッドミルと比較して小型で移動が可能というメリットがあり、病棟でも使用できるのは強みだと思います。

設置方法も臥床しながら出来るため安易で、個人的にはPOPOの使用頻度が多くなってます。

 

【終わりに】

当院では入院患者さんに対して使用され、脳卒中、骨折等の運動器疾患、神経難病と様々な疾患により臥床傾向となり体力が低下して日常生活に関わる動作が困難になってしまった方など適応は多岐にわたります。

特に歩行訓練にて使用されることが多く、患者さんは転倒しない安心感から意欲的に歩行練習に取り組み、基本動作能力や歩行能力の改善が期待できます。

 

POPOは高い安全性と利便性から様々な目的で使用することができ、患者さんの効果的なリハビリテーション手段の一つとなります。当院では、リハビリテーション支援機器の使用を推進していくとともに、その効果を検証等も行っています。

 

 

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【注意】

本ブログの掲載記事は,個人的な見解を含んでおり正確性を保証するものではなく,

当院および当科の総意でもありません.引用や臨床実践等は各自の判断と責任において

行うようお願いいたします。