旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

驚愕の準備期間

2004年02月19日 | 海外ツーリング
 ある海外ツーリングを何度も経験しているライダーと話していた時に、”僕はパンク修理だってできませんよ。でも何とかなるものです。”という話が飛び出しました。私自身の海外ツーリング経験から言っても、たいていの場合、パンク修理できなくても海外ツーリングはできると思います。
 ちなみにここまで読んでホッとしたあなたは、もちろんそれが致命傷になることもあるのは覚悟してください。ある意味、その人がパンクが致命傷になるほど踏み込んだツーリングをしていないだけのことでしょう。
 そのときかなり酔っていた私は驚いたり、感心したりするよりもむしろ”もったいないなぁ”という印象を漠然と抱いたのでした。
 私自身、実際に海外ツーリングを思い立った頃はパンク修理もろくにできませんでした。自分でできる事はオイル交換くらい。ただ、今のように情報が溢れている時代でもなく、やはり海外ツーリングが大冒険に思えた私はある程度のメカニックの知識がないと危険だと考え、バイクショップの扉をたたいたのです。幸いな事にお世話になったショップは職人がかった頑固親父のやっているショップで1年間にわたって私に厳しく指導してくれました。
 つまり、私は海外ツーリングを思いついてから準備に1年以上の期間をかけたわけです。いま、こうやって手軽に海外ツーリングが楽しめるようになってみると、驚愕の準備期間です。
 海外ツーリングの思い出①、②を読んだ方は私が自分の海外ツーリングにあまり良い思い出を持っていないように感じる方もいるかもしれません。事実、私は走り始めてから帰国するまでの旅そのものはそれほど他の自分の旅と比べて突出した体験とは感じていません。
 ただ、この旅が私にとってすばらしい体験であったと思えるのはこの1年にわたる準備期間の存在です。普通に学生生活を送っていては到底体験できない濃密で、目標のハッキリした1年。授業が終わるとバイクショップへ飛んで行き、オイルまみれになって仕事を手伝い、その後アルバイトで資金を稼ぎ、家に帰ると地図を広げて走行ルートを検討、合間を縫って通関業者を探し、カルネの申請のためにたびたびJAFを尋ね、今まで経験したこともないような英文の申請書をタイプアップ(当時、ワープロは高級な機械でした)。
 このときの体験があったからこそ、現在私はキーボードをブラインドで叩けるし、普段バイクショップの世話にならなくてもTS200という愉快なバイクと付き合う事もできます。ショップでの経験を買われてオーストラリアンサファリラリーにメカニックとして連れて行ってもらうという貴重な体験もできました。そこで得たインスピレーションを元に自分自身2度にわたってUAEデザートチャレンジに出場するというさらに貴重な体験をすることもできました。
 経過を楽しむのところでも書いたように、旅は思い立った瞬間から始まっていると思います。実際、私がこのときの海外ツーリングで体験したパンクは1回だけ、その後エンジンをブローさせましたがそのときはバイクショップが存在するイスタンブール。バイクショップでの経験が活かされる事はあまりなかったのです。ただ、その後の自分の人生に新しい楽しみをいくつか残してくれた事も事実。
 この”驚愕の準備期間”があったからこそ、私は今、E&Gでこうやって仕事をしているとも言えます。
 海外ツーリングに限らず、皆さんも旅行に出るためには休暇をとらねばならなかったり、貯金をしなければならなかったり、言葉をどうしようかとか、いろいろやらなければならない”余計”な事が発生してくるでしょう?それを”面倒なこと""余計なこと”と考え出したらやっぱり”もったいない”と思うのです。
 海外旅行に行くために言葉を勉強したりした事が今後、あなたの人生をどう彩ってくれるかわかりません。休みを取るためにまとめて仕事をした事が今後どういう展開に結びつくかわかりません。
 海外ツーリングにメカニックの知識は不要ということを主張しても残念ながらそこからは何にも生まれてきません。”この機会にパンク修理でも練習するか”と考えた方が前向きで、結局、旅を豊かにできると思うのですが皆さんいかが?
 ちなみに、”それじゃ、パンク修理はどこで教えてくれるの?”という人へ。大丈夫。連絡いただければ私が教えましょう。ただし厳しいかもよ。

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