人間は保守的なのか

人それぞれの価値観の形成には間違いなく自分の所属している社会が影響を与えています。もしかすると価値観というのは大部分が周囲の社会からの影響によって形成されるのかもしれません。そして、自分に影響する社会というのはあまり大きな意味での社会ではなく、直接的な接点のある親類縁者や、学校や会社、取引先、友人あたりから多大な影響を受けていると言えます。

新しい価値観や感性と接するという事は当然ながらこのような社会から一歩を踏み出して今まで接点の無かった社会と接する事が必要となってくるわけですが、このあたりが人間の苦手とする所のようです。これが仕事ともなると、やらなければならなくなる場合が多いので、成長していく事もできるのですが、旅やバイクといった遊びともなると、今まで通りやっていれば今まで通りのレベルでは遊べるわけですから、そのレベルに留まる事を決めれば、新しい価値観や感性など必要ないと考える事も可能です。

インターネットという世界に開かれた環境を与えられてもSNSのようなある程度限られた社会に安住の地を見出す人が多い事をとってみても、人間はもともと、あるレベルで滞っている事に安心を得るものかもしれません。オートバイライダーがやたらと、"ツーリング派"とか"レース派""オフロード派""オンロード派"など、誰に頼まれたわけでもないのに自分を規定して自分の遊びを自ら限定してしまうのもこれに似ています。旅は新しい社会と触れるという上では素晴らしい方法ではあるのですが、行き先や手配内容を選択する際に既に自分の旧来の価値観を持ち込んでしまう事で、結局は新しい世界と触れる事ができない場合も多いのです。

最も残念なのは、せっかく新しい世界と触れ、新しい価値観と触れても、結局は自分にとって馴染の深い旧来からの狭い社会へ戻って行く人が意外と多い事です。別に前の社会を捨てなくても新しい社会と触れる事はできるのですし、そうする事が社会を広げ、世界観を広げ、新しい価値観を獲得する事だと思うのですが、それがなかなかできないからこそ、旧約聖書に描かれたような社会を未だに繰り返しているのかもしれません。