旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

怠惰な旅人

2009年04月09日 | 旅行一般
自由旅行を楽しむ旅人には様々なタイプの人々がいます。人によっては自分のいるエリアの情報をどんどん収集して少しでも興味を覚えた所へがつがつ移動していく行動力の塊のようなタイプの人もいますし、一つの所にじっくり腰を据えてその町の隅々まで知り尽くそうとする好奇心の塊のような人もいます。

旅人としての私はどちらかというと”怠惰”なタイプの人間で、何となく気持ちが良いと感じる町にたどり着いてしまうと、そこに何をするでもなく腰を据えてズルズルとその町に滞在を続けてしまう事が多かったように思います。ですから、”スーパーカブでタイ”の初日のようにガツガツ移動していく事は私にとっては奇跡的な行動力といえます。私個人の感性で行動していたら、到着してから1週間はバンコクで何をするでもなく過ごし、それからようやくチェンマイへ向けて移動するといったペースになってしまうことでしょう。

さて、そういう怠惰な旅の毎日とはどんなものでしょうか。

特に目的も無いのに1つの町に滞在を続けていると、何となく行動がパターン化してきます。朝、特定の屋台で朝食をとり、それからどこかで時間をつぶし、また決まったところで昼食。そんな事をやっていると、いつも同じ店で居合わせる現地の人や、他の旅行者と何となく顔見知りになって、その人たちに誘われて午後はどこかに行ったり、飲みに行ったり、そんな事をしているうちに1日が過ぎていきます。時には翌日どこかに行く約束ができる場合もあって、そんな事を繰り返しているうちに1週間位はすぐに過ぎ去ってしまいます。

人間というのは習慣的に生きる習性があるのか、毎日をパターンどおりに生きていると、旅先でも何となく安心できます。非日常を求めて旅に出た挙句、すぐに日常化しようとしてしまうのですから人間不思議なものです。

そんな毎日をおくっているうち、少しずつ膨れ上がった知り合いの中から他の町の事を話す人が現れて、その話が移動のきっかけとなる事もありましたし、知り合いになった人間の中に”悪い考え”を持って近寄ってくる人間が増えてきて、それから逃れるために移動をすることもありました。あるいはもう少し日数が過ぎて、あまりにもパターン化した日々の生活に飽きが来て移動する事もありました。

そんな風に偶発的に身の回りで発生する出来事に転がされて旅を続けていくわけですから、行動的な旅人が辿る旅路とは大いに違い、なおかつ圧倒的に時間がかかります。その分、その怠惰な旅のスタイルを無理やり肯定するとしたら、様々な人と無駄話をしたということでしょうか。

今になってあの頃の事を思い出してみると、時間という意味では非常に贅沢な旅のスタイルであったと思うのです。お金がない分は体力でやりくりして、ゆっくり時間をかけながら旅をするのは歳をとってしまうとなかなかできません。格安フリータイムツアーで1週間旅するなんていうのは何歳になってもできる事です。若いときに、若いときにしかできない旅をできた点で非常に恵まれていたとも思います。

最近、アエロフロートの2ヶ月有効にユーレイルパスをプラスして出発していく若者や、バンコクへ90日有効の航空券で出発して、実際の行き先はバンコクで決めるなんていう手配をするケースが非常に減りました。もしかすると他社では取り扱っているのかもしれませんが、そんな若いときにしかできない少し無茶と言われかねない旅を理性的に避けているとしたら残念な事だと思います。


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