旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

連載2 私の海外ツーリング

2005年05月14日 | 海外ツーリング
【旅は始まる】
 最初の動機はどうにも不純きわまるものであったにもかかわらず、準備を進め、いろいろな問題をクリアし、そして何より他人に”旅への憧れ”を語っているうちに、自分自身も自分の言葉に洗脳されてしまい、いつの間にか目的であった”モテる”事は端に追いやられて、”モテるための手段”であったはずの”旅”がいつしか自分の目的の大きな部分を占めるようになっていました。私の嫌いな”手段の目的化”ですが、この場合はこれでよかったのでしょうね。
 
 怖がりの私はかなりの情報を集めてカラチに降り立ったはずでした。ところが7時間遅れのフライトで到着したカラチの空港には信じられない光景が待ち受けていました。
 
 カラチ空港の税関。そこにはパスポートに100ルピー札2枚を挟み込んでチェックなしで税関を通ろうとする乗客と、公然と賄賂を集金する税関職員の醸し出す凄みのある熱気が渦巻いていたのです。

 ※これは1987年の話です。今のカラチはきっと、こんなことないでしょうね。※

 少し冷静になろうとして列を離れた私は税関の一角で考えます。実はバイクのパーツの一部を手荷物として持っているわけで、これはもめる材料になるでしょう。

 観察していると、パスポートに100ルピーしか挟んでいない人の荷物は税関のカウンターに乱暴にぶちまけられています。何も挟んでいない人はもちろん、床にまで荷物をばら撒かれています。
 
 これは郷に入れば郷に従おうと、パスポートに100ルピー札2枚を挟み込んだ私。ところがそのとき、税関の片隅で手招きするパキスタン人の姿が目に映ったのです。しかも、彼は税関のカウンターを通り過ぎた向こう側にいて、税関職員と同じ姿をしています。

 招かれるままにそちらに向かいます。それでも具合のわからない私は税関のカウンターで立ち止まります。税関職員は”忙しいから邪魔するな”的なジェスチャーで邪険に出口を指差します。そこには先ほどの男が・・・。
 
 つまり、外国人は賄賂対象外。フリーパスみたいなものだったんですね。

 それにしても凄いところに来てしまったものです。

 今まで”モテたい”一心でやってきた私でしたが現場に到着した瞬間に厳しい現実を突きつけられ、その現実に打ちのめされ、”自分は甘かった”と感じ、そして明日からの生活や何よりもバイクの受け取りがうまくできるかどうかの不安が一気に高まり、その日は何とかたどり着いたカラチ市内のホテルであまり眠れない夜をすごしたのでした。

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