パニック

私は電卓をいつも机の上のトレーに放り込んでいるのですが、当然、使う時には手元に引き寄せます。たいていの場合は電話をしながら電卓で航空券代や空港税を足し算するという単純な作業で、通常は一件落着すると元のトレーに戻すわけです。

ところが時には連続してお問いあわせに対応する事もあるのです。そんな時はいつもトレーの中にある電卓が机の上にあるのです。つまりすぐに使える状態でスタンバイしている事になります。ところがこんな時、どういうわけか、どうしても電卓が見付からないのです。こんな経験は皆さんにはありませんか。しばらくしてから、すぐ目の前、それもトレーから取り出した電卓を置こうとしていた場所に既に電卓があるわけですが、電卓をどこにやったのか探して引き出しを開けたり、他の机を探したり大慌てです。そして、現在ある場所を発見した後は、"自分は頭が悪いのではないか"と不安になったり、自己嫌悪に陷ったりもします。

こういう時は少なからず自分がパニックに陷っているのではないかと最近気がつきました。いつもあるべき場所に、あるべき物がない事はにんげんの習慣から外れてパニックに陷って判断が上手くできなくなっているのではないでしょうか。

この事が旅先で会うトラブルと結び付いているように思うのです。旅先では日常の習慣とは大きく離れたところで行動する事になりますから、電卓はトレーにあるというような習慣は一切役に立ちません。そのためパニックに陷って、日本では絶対に間違えないような判断を間違えたりするのだと思うのです。だから、旅先で何かを判断する時は少し時間をかけて、自分は日本での生活では同じような状況でどんな判断をするのかを一度考えてみる事と、自分がいつも少しパニック状態にあるとの自覚を持つ事が良いのではないでしょうか。