旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

自分を旅先に合わせるか旅先を自分に合わせるか

2014年02月07日 | 旅行一般
 どうしても必要となるパスポートなどの装備を除いて、旅の装備は大きく2つに分類できます。

 一つは自分自身を渡航先に合わせるための装備です。言葉にすると小難しいのですが、たとえば今、オーストラリアに渡航を考えた場合、日本は冬でとても寒い日が続いていますが、現地は一部の町では50度を越える猛暑。今の日本ではまず必要ない夏物の衣類を装備に加えます。こういった装備が自分を渡航先に合わせるための装備にあたります。

 もう一つは渡航先を自分に合わせるための装備です。小瓶に入った醤油とか、梅干し飴、考え方によっては携帯電話やノートパソコンもここに入るかと思います。つまるところ日本での日常生活を現地に持ち込むための装備です。私の装備で言えば旅の荷造り3で紹介した「背中こすり」もこちらに分類されます。

 これら両方の目的に基づいて装備を考え、鞄に詰めて旅に出る事になるわけです。2つの目的の比重にはそれぞれ違いがあるわけですが、おそらくほぼ全ての荷物の中にこれら両方の目的の物が入っていると思います。

 印象としては前者は旅先での必需品、後者は旅を快適にするための便利グッズのような位置づけにもなると思います。ただし、本人にとっては旅を快適にするための便利グッズは旅の必需品になっている場合が多くて、他人から見ると”なんでそんな物持ってるの?”と思える事もあります。

 私自身の体験でも、添乗員として同行する際の印象としても、前者については人によってそれほど大きな荷物の差は出てこないように思います。たとえば1週間の現地滞在で持って行く着替えの料なんて知れていますし、洗面具の料だってそれほど差は出ません。人による荷物の量の差は多くの場合、後者から発生していると言えます。

 そして、後者にあてはまる装備は旅の楽しみを考えた場合少し危険な存在ともなります。現地へ日本の便利さや快適さを持ち込むための装備ですから、その装備を使っている間は旅先へ日常を持ち込んでいる事になって旅の重要な要素である(と私は思っている)非日常体験を拒否することになると思うのです。

 旅先で少しの不便等を味わうのも旅の貴重な体験で、普段何気なく手に入れている便利な日常生活が当たり前に存在するわけではない事を意識できる良い機会にもなると思います。そして、そういう事を体感する事がわざわざ現地へ身を置くからこそできる旅する事の醍醐味でもあります。テレビの旅行番組やインターネットの旅の記事ではできない体験です。
 
 もちろん、旅を快適にする装備もあってよいと思います。バランスが大切と思うわけです。旅の荷物がなかなか減らせられなくて悩んでいる方や、いつも他の人よりずっと荷物が多いと思った方は、自分の荷物リストを”自分を現地に合わせるための装備”と”旅先を日本にするための装備”という視点で見直してみると良いかもしれませんね。 


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