旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

テーマ不要の旅

2008年02月18日 | 旅行一般
 突然ですが、あなたにとって、最近の旅のテーマは何だったでしょうか。名画の鑑賞、世界遺産を訪問する、ペンギンを観察する、異文化との交流、いろいろあるのかもしれません。私もお客様からその方の旅のテーマを聞かせていただく事もありますし、そういうテーマがあると旅の楽しみもひとしおかもしれませんね。

 私自身はどうであったかというと、いつもテーマは後付でした。あまり深く考えずに、どうしてその国を行き先に選んだのかも明確ではなく、ただ単に偶発的な理由(それでも、その時にはそれなりの理由として存在するわけですが)、例えば航空券代がそこまでしか払えなかったとか、そんな軽簿な理由で訪れて、行ってから、何を見るかを調べたり、そんな旅がほとんどでした。

 ただ、テーマが決まっていないまま出発する旅にはそれなりの良もあると思うのです。

 テーマが決まっているということは、それだけ事前に調査をして、現地での行動もかなり決定済みで現地に到着することになります。注意しなければならないのは、自分の持っているテーマは場合によって、その国に対する偏見にも結びつく可能性があるということです。

 たとえば、”ニュージーランドの大自然の中をバイクで走る”というテーマを自分が考えていたとしたら、ニュージーランドのどこにでも広がっている牧場を”大自然だなぁ”と感じようとするでしょう。牧場というのが人工的なものであることに気がつくのを妨害する偏見となるわけです。

 テーマもなくニュージーランドをバイクで走り始めたら、”どこへ行っても牧場だなぁ。随分開拓されて自然破壊が進んだ場所なんだなぁ”と感じるかもしれません。

 ニュージーランドがヨーロッパ人に発見されるまでは北島、南島ともに完全に森林に覆われていたという歴史を考えると、後者の感じ方の方がより素直であるように思えますし、頭で理解するのではなく、体感する中での”気づき”みたいな体験が旅の楽しい部分であり、わざわざそこを訪れる事を正当化する理由でもあると思うのです。

 何も考えずにその国へ飛び込んで行って、そこで気づいたことを記憶に刻んだり、または不思議に思った事を持ち帰って日本で調べ直して理解を深めたりするような旅もまた楽しいものです。

 情報を収集し、その集大成として実際の行動(旅)に出るというのがあまりにも当然に思われすぎているように思います。

 本当は実際の行動から得た体験による発見に一喜一憂したり、体験による疑問が新たなる行動の引き金になったり、そういう旅の方が自分独自の視点を持つために役に立つと思います。


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