掃除機か箒か。それが問題だ。

　先月のとある日曜日。事務所にしているスペースの2階に住んでいる私は土曜日か日曜日を全体の掃除の日としており、全体に掃除機をかけたり拭き掃除をしたりするのです。この日はあとでコーヒーでも飲もうとコーヒーメーカーのスイッチをオン。さらに部屋の生活臭を消すためにオーブンに緑茶の茶殻を入れてスイッチをオン、そこへ掃除機のスイッチオン。一瞬、掃除機は働いたのですが、ストンと動作を止めてしまいました。接触が悪いのかとスイッチを入れなおしたりしてももはや再起動してくれる様子はありません。

　掃除機そのものはとても古いもので、しかも人からいただいたものですから、寿命が尽きたかと諦めもついたのですが、それじゃあ今日の掃除はどうするかが問題。今から家電量販店へ掃除機を買いに行くかと思ってもまだ開店時間になっていません。正直なところ、しばらく思考が停止してしまいました。

　そういえば、時々階段を掃除するのに使っている箒がありました。塵取りも。というわけで、この日は箒と塵取りで掃除することにしました。たいして広いスペースではないので箒と塵取りでも掃除はあっという間に終わりました。床に置きっぱなしになっているものを箒でよけながら掃除できるのでむしろこちらの方が便利かもしれません。さっきまで新し掃除機を買う事に一旦決めていた気持ちが少し迷いに。そして、今後は箒に塵取りでいいという結論に一旦到達。

　拭き掃除も終えて先ほど淹れておいたコーヒーを飲もうと思ったのですが、コーヒーが半分しか落ちていません。ここでようやく気がつきました。前置きで気がついた方もおられるでしょう。そうです。ブレーカーが落ちていたのですね。

　ブレーカーを復旧させてコーヒーメーカーも掃除機も生きている事を確認。一安心。ただ、箒と塵取りでの掃除は思いの外快適でもあったのが新しい発見。翌週からどうするか決めかねて、掃除機の横に箒と塵取りを吊り下げるフックを付けました。

　さて、翌週です。掃除機と箒、一瞬迷ったのですが、結局掃除機を使って掃除を始めたのでありました。

　”作業”。私にとって”掃除”は今のところ”作業”なんだなと思った次第。

　何度かここで触れているように、オッサンの一人暮らしであるにも関わらず、私のところではパンは自家製。スーパーへ行けば100円せずに買えるのに、わざわざ何時間もかけてパンを焼きます。味だって”やっぱり自家製はおいしい”とは思いません。ただ、自家製で焼き立てのおいしいパンが食べたければ”ホームベーカリー”という手もあります。多分その方が衛生的でもありますね。

　それでも、おいしくなかったり、失敗したり、手間がかかったり、そんなことを含めてパンを焼く楽しみ。だから、パンを焼くのは”作業”ではなくて”趣味”という事になります。逆に”作業”だったら失敗はあまり許されませんね。
　
　古いバイクや車をオイルまみれになりながら直したり、そういうのもやっぱり”作業”ではなくて”趣味”です。

　旅する楽しみもここにあると思うのです。上手くいかなかったり、恥をかいたり、手間がかかったり、無駄足になったり、思わぬ感動を得たり、不思議な出会いなどなど、失敗を含めた体験全体が旅の魅力です。むしろ失敗した事やダメだった事の方がいつまでも思い出に残るものでもあります。旅は”効率よくこなす作業”ではないと思うのであります。