
▲ 半年前に修理に出していたホールクロックが、戻ってきた。
前と同じように入口に置いてもらう。
コ~ン、コ~ン、コ~ン と リビングにいても、寝室にいても、優しいウエストミンスターの鐘音で時刻を知らせてくれる。ああ、聞きなれた音がやっと家に響いた。
このホールクロックは、35年前に今の住居の新築祝で家内の義兄から、贈られたもの。その後、コ~ン、コ~ン と玄関廊下で時を知らせ続けててきた。
それが半年前に、止まってしまった。こんな大型柱時計を修理してくれるところはなかなか無いが、ようやく明治25年に創業の東京堂時計店さんが修理を引き受けてくれた。

東京堂さんによると、この時計は高いよ。この木の種類を使った時計は、もう無いよ、と言われた。
と、言われると改めてこのもらい物に興味をもって、まじまじと眺めてみた。

▲ 文字盤の上部には ”Tempus Fugit" の文字が。その地球儀みたいな下には ”Urgos” の文字が書かれている。

▲ 文字盤の下部には、”WESTERN GERMANY” の刻印が有る。
検索してみると、統一前の西ドイツ、ウルゴス Urgos 社製の時計だということは直ぐ分かった。
で、”Tempus Fugit" (テンプスフジット)とは何ぞや。ウルゴスの時計には皆この文字が入っている。そのためテンプスフジット社の時計と紹介する記述もある(間違い)。
ウイキペディア照会では、”Tempus Fugit" とは ”時は飛ぶ” という意味のラテン語の成句だと。怠惰や先延ばしを戒める言葉として使われると。ウムム・・。日本語なら「光陰矢の如し」だな。

翼が生えた砂時計のモチーフ。墓石や記念碑などにヨーロッパでは刻まれるらしい。
英語でも、”Time flies like the wind" (風のように時は飛ぶ)、”Time flies when you're having fun" (貴方が楽しんでいる間に時は飛ぶ)のような言い方がある。
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有限な個人の、有限な時間はどんどん失われていく。国ですら「失われた30年」だし(笑)。失う時で思い出すのは、

▲ そう、プルーストの『失われた時を求めて』"A la resherche du temps perdu " 。ギネスに世界最長の長い小説と認定されている。長ければいいもんではないが、プルーストは生涯をかけて究極の文学の在り方を自伝風小説の形で追及した。ジョイスの『ユリシーズ』などと共に20世紀を代表する世界的な傑作とされ、後世の作家に多くの影響を与えている。(Wiki)
有名なくだりは

ある寒い冬の日に、熱い紅茶を一さじ掬った時に混じった一片のマドレーヌを食べた時の快感で、それとまったく同じ快感を叔母が入れた紅茶で味わった幼少の記憶を鮮やかに思い出し、それをきっかけに田舎町コンプレー全体の光景が日本の水中花のごとくティーカップの中に広がった体験を彼は語り始める・・というくだりだ。
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ところで、ぼくが唯一ブックマークしている「団塊シニアのひとりごと」さんの、今日の記事は「老いの途中76歳の実感」。
老いの途中76歳の実感 - 団塊シニアのひとりごと
人生には思うようにいかなかったこと、つらかったこと、悲しかったこと、羨ましく思ったこと、やり残したことなど数えあげたらきりがないほどあるものだが、そういうことは...
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その中で、
「そして自分の過去を冷静に検証することで、これからの自分に何が必要で何を支えにどう生きていけばいいかという現実が見えてくるような気がする」という一節があった。
ボクは過ぎ去った過去は振り返らずにとにかく、前だけ向いて進むことをモットーとしてきたが・・ 進む前に、今の自分の位置を正しく捉えるために、過去をそろそろ振り返ることも必要かも。ホールクロックを贈ってくれた義兄も3年前に亡くなって、もういない。義兄は色々と気配りをしてくれたが、それに感謝もせずにずっと甘えていたような気がするなあ。
マドレーヌは無いが、あんまんが手元にある。
よし、お茶を入れて、あんまんを頬張りながら、ボクの失われた時をめぐってみよう。
おまけ:
先日の横手山頂上の雲上ヒュッテ のレストランでもホールクロックがあった。

しかし、”Tempus Fugit" のラテン標語は無かった。大陸製だから。