スパイスコラム

陸の孤島から、せめて一振りのスパイスを!!

糖質制限食を続けると、死亡リスクが増える?

2013-06-29 09:30:34 | 健康
ファーマータナカは御多分にもれず、いわゆるメタボリックシンドローム、中年太りというやつである。
昨年「親父ダイエットクラブの奇跡」という糖質制限の本と巡り合い、3ヶ月で約10kgのダイエットに成功した。
その後も紆余曲折はあったものの、基本的には糖質制限食、節酒、禁煙(もう30年になる)、クロスバイクでの適度な運動と、書いてみれば何ともストイックな生活を綱渡り的に持続している。
最近のTV番組でも、以前のように、カロリーや脂質摂取制限ばかりでなく、糖質制限も多く語られている傾向があるようだ。

糖質制限を実行又は、これからチャレンジしようとする諸氏に、気になる記事があったので紹介する。

<糖質制限食を続けると、死亡リスクが増える?>

結論から述べると、1~2年間の低炭水化物食は血糖コントロール・減量の点で検討に値するが、長期的には生命予後が悪化する可能性がある。

私たちが行ったメタアナリシス7)の結果では、総カロリーに占める炭水化物の割合を10段階のスコア化し(low-carbohydrate score;LCスコア)、炭水化物の割合が低い(30~40%)群と高い(60~70%)群を比較したところ、総死亡リスクは低炭水化物群で31%、有意に増加した(調整リスク比の95%信頼区間は1.07-1.59)。
「低炭水化物・高蛋白質」群と「高炭水化物・低蛋白質」群を比較した結果(LC/HPスコア)でも、前者で総死亡リスクは22%、有意に増加し(同1.02-1.46)、炭水化物制限食による長期的な効用は認めなかった。
一方、心血管疾患死については低炭水化物群で10%増加したが、有意差は認めなかった(同0.98-1.24)。
また、心血管疾患発症リスクはLCスコアでの検討では有意差はなく、LC/HPスコアで検討していた1文献では有意差を認めた。

以上の結果から、炭水化物制限食をし好する人は、脂肪や動物性蛋白質の摂取量が高値となる傾向にあり、そのことが総死亡の増加への関与が想定される。
ただし、今回の解析はさまざまな理由で炭水化物摂取量が低かった人達の観察研究の結果であり、管理された低炭水化物食による介入研究の結果ではないため、確固たる結論を出すことはできない。

以上の結果から、炭水化物制限食をし好する人は、脂肪や動物性蛋白質の摂取量が高値となる傾向にあり、そのことが総死亡の増加への関与が想定される。
ただし、今回の解析はさまざまな理由で炭水化物摂取量が低かった人達の観察研究の結果であり、管理された低炭水化物食による介入研究の結果ではないため、確固たる結論を出すことはできない。

というわけで、今回の連載のタイトル、「低炭水化物食を続けると、総死亡が増える。○か×か?」は、「現時点では○の可能性がある」が答えである。
なお、今回の検討は炭水化物の特徴や蛋白質源などの影響は加味されておらず、これらの解析を含む長期介入研究も必要である。
また、今回検討した論文はいずれも欧米の一般人や医療者を対象にした試験であり、糖尿病患者や日本人への影響も今後の課題である。

今回の検討結果をもって炭水化物制限食に対して賛否を論じることはできないが、薬物治療を行っている糖尿病患者については、極端な炭水化物制限により低血糖リスクが高まることを鑑み、バランスよく食事を摂取することの大切さを伝える必要性があると考えられる。
食事指導の際には、炭水化物制限は長期的には悪影響がある可能性があり、食事内容は主治医と十分相談する必要がある旨を伝え、患者と医師が協働で判断することが大切である。

なお、低炭水化物食については、日本糖尿病学会も今年3月に声明を出している。
「糖尿病においては総エネルギー 摂取量の制限を最優先とすること」「三大栄養素の推奨摂取比率は、炭水化物 50~60%(150g/日以上)、蛋白質20%以下を目安とし、残りを脂質とする」といった内容である。
炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは、その本来の効果のみならず、長期的な食事療法の遵守性や安全性などの点においてこれを担保するエビデンスが不足しているとの理由から、「現時点で推奨されない」としている。
日経メディカルオンライン>糖尿病治療のエビデンス

ということで、チャレンジの諸氏は当面あくまでも自己責任の範囲でということになりそうだ。
コメント
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