-写真の部屋-

奥野和彦

バブルの頃に

2016-06-19 22:20:30 | 写真


日曜日の深夜は
どこのラジオ局もいい番組がなくて
割と早くに放送が終わってしまうので深夜の運転手には
ちょっと都合が悪かった。
タコグラフのついた車で、作業中は20キロを超えてはならず
日中睡眠をとっている生活ではあったけれど
眠くなることもあった。

襟川クロさんの映画情報番組が放送終わりに近い時間であって
それが終わってしまうと日曜日の仕事は本当に
音もなく、場合によっては無言の車内で相棒の志村くんと
2トントラックを転がすのだった。
志村くんには時々会いたいなと思う。
社会に出て一番尖っていた時期に
自分としては一番ニュートラルな間柄でいられた友人である。

志村くんにはそれ以降会っていないが
なんと、自分がその後映画業界で仕事をするようになり
襟川クロさんとは、奥ちゃん、クロさん、の仲である。
自分がフリーカメラマンになる時に背中を押して頂いた。

清掃のローテーションが6号三郷線になって、
車が八潮から三郷にさしかかってくると
「ほら、田舎の匂いがし始めた…」と志村が言う。
そこに暮らしているものにとってはなんだかわからなかったが
あんまりそういうので、よくよく聞いてみたら
どうやらそれは稲刈りが終わった田んぼを焼いて
その焦げた匂いがまだ、夜の湿気の中に漂っているその匂いを
田舎でする匂いだと言っていることがわかった。
彼の育った新宿百人町界隈では確かにしないかな。



もっと光れ、もっと流れろ。もっと溢れろ。
もっと滲んで、泡になって消えてなくなれ。