キング・クリムゾンやイエスのCDの再発盤を買っていると同梱のブルーレイディスクに収録されたハイレゾ音源が手元にどんどん増えていって、ボーナストラックを聴こうとして96kHzや192kHzの音源をうっかりDPF-7002改で再生するとこの世の終わりみたいなノイズが発生して妻に怒られるので、ボーナストラックを安全に聴けるようにDAC をずっと探していました。
ハイレゾ音源は手元にあるブルーレイレコーダーのRD-X10(ES9016搭載)でも聴けるのですが、一部のブルーレイディスク(イエスのリレイヤー等)ではうまくメニューが表示されなくて再生ができなかったりするし、そもそもハイレゾ音源を再生してもDPF-7002改の音には到底及ばないので満足できません。
ところがDACを探しているうちに旭化成の火事やコロナリバウンドによる世界的な半導体不足が発生し、満足できそうなDACが入手困難または価格高騰してしまいました。
さて困っているときにロームが全く新規にDACチップを開発したというニュースを目にしました。
ロームは電子部品メーカーでありながら音楽振興にかなり力を入れており、私も何故かロームの音楽振興部門が発行した日本の西洋音楽黎明期の音源をまとめたCDを持っています。
音楽が好きでオーディオをやっている者からすると、音楽好きの電子部品メーカーがDACチップを作るという、非常に心ときめく、大きく期待できるニュースでした。
自作は時間もなくハードルが高いのでこのDACチップを使用した市販品DACの発売を待ちましたが据置型でちょうどよさげなものが出ないなと思っているうちに仕事が忙しくなりそれどころではなくなってしまいました。
ここ1ヶ月、仕事がようやく一段落したので久しぶりにネットで調べると、SMSLからロームのフラッグシップDACチップBD34301EKVを使用したDACが信じられない価格で発売されており、しかも評判がものすごく良いので、一も二もなく購入しました。
それがD300です。
特に決め手は「聴いていて楽しい」という評価があったことです。
高音や低音がどうとか、透明感がどうとかよりも、この評価が一番信用できます。
演奏者が演奏に込めた思いが伝わるからこそ「聴いていて楽しい」のであり、これこそが私がオーディオに求める全てだからです。
早速我が家のリファレンス機DPF-7002改と比較しました。
いつもの以下比較用CDで比較しました。
①セクシーオトナジャン「オンナ、哀しい、オトナ」(EPCE-5369)
試聴ポイント:声をどこまで目の前に感じてどこまで見通せるか、みやびちゃんがどこまで可愛いか
②ラルクアンシエル「ray」(KSC2-283)より「Honey」
試聴ポイント:2番のサビの録り直し箇所にどのくらい違和感を感じるか
イエス「こわれもの」(AMCY-6291)より ※1998年リマスター盤
③「ムード・フォー・ア・デイ」
および
④「燃える朝焼け」
試聴ポイント:退屈な「ムード・フォー・ア・デイ」をどのくらい楽しく聴けるか、「燃える朝焼け」の長いイントロの頭の辺りのブラッフォードのドラムの表現がどこまでリアルか、それぞれのドラムの微妙な位置関係がどこまで見えるか
⑤デュ・プレ エルガー「チェロ協奏曲」(SRCR-2643)
試聴ポイント:デュ・プレの鬼気迫る過剰な演奏がどこまで胸に刺さるか
生まれて初めて再生する曲が①セクシーオトナジャンというのはD300が気の毒でしたが、ほぶらきんやニナ・ハーゲンよりはマシと諦めてもらうしかありません。
さて①ですが、出音一発目でたまげました。
「聴いていて楽しい」という評価は当たっていました。
この「オンナ、哀しい、オトナ」という曲はボーカル以外は100%打ち込みと思われますが、音楽が有機的に聴こえます。
打ち込み臭さを無くすために音源を選んだり、ソフト的・ハード的に色々と細かいニュアンスを付加したりしているのでしょうが、そのクリエイターの細かい努力がきちんと表現できているということです。
聴いていて非常に楽しいです。
それよりも驚いたのが高級オーディオの音であるということです。
高価なDACチップを使いながら安価な中国製ということで、いつもの中国製の安かろう悪かろうというオチも危惧していましたが、杞憂でした。
それどころか、何十万円か出さなければ得られない音が出ています。
BD34301EKVを使用していることを売り文句にするだけで、回路設計やそれ以外のパーツは手を抜くというのが中国製の平常運転だと思うのですが、ここでは中国人真面目に仕事をしています。
しかし、ボーカル3人それぞれのマイクとの距離が見えるかというと、そこまでではありません。
ミキティの開けた口の大きさは分かりますが、喉の奥まで見通す程ではありません。
DPF-7002改はそこまでできています。
でも雅ちゃんの可愛さはきちんと伝わっていますよ。
②ラルクアンシエル「Honey」の録り直した2番のサビの違和感も、DPF-7002改程ではありません。
③「ムード・フォー・ア・デイ」では明確にDPF-7002改と差が出ました。
DPF-7002改では生ギターの演奏のニュアンス(アーティキュレーション)が目の前で弾いているように伝わりますが、そこまで音楽の輪郭が明瞭ではありません。
しかしこの退屈な曲が楽しく聴けるという点はクリアしています。
DPF-7002改が異常なレベルなだけで、演奏のニュアンスはきちんと表現できており、十分に楽しく聴けます。
④「燃える朝焼け」のブラッフォードのドラムもDPF-7002改程は見通せません。
⑤デュ・プレのエルガー「チェロ協奏曲」は、いい線いっています。デュ・プレの過剰な演奏がきちんと伝わります。DPF-7002改と比べなければ満足できるでしょう。
DPF-7002改で聴くこの曲のデュ・プレはもの凄いです。一音一音に込めた思いがそのまま刺さってきて胸を掻き毟られます。
第一印象はこのようなところです。
しかしエージングも全くできていない買ったばかりの音ということを忘れてはいけません。
買ってすぐにこのレベルの音が出ているということは驚くべきことです。
また、フィルター等色々と設定できるようですが、デフォルトのまま何もいじっていません。
この機種はエージングに時間が掛かるという記事もあり、現在はBluetooth接続でMacのiTunesを流しっぱなしにしています。
エージング後の音、そして色々と設定を追い込んだ音がどこまで変わるのか、非常に楽しみです。
仕事が一段落した上に、コロナに罹患して3週間仕事をさせてもらえず暇なので、久しぶりに投稿しました。