化学系エンジニアの独り言

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ガソリン価格

2006-04-11 | 石油
アメリカのガソリン価格上昇が止まらない。AAAによれば全米平均価格は$2.61で昨年同時期に比べて36セントアップしている。

今は供給不足でもハリケーンが襲来しているわけでも無いのに、価格そのものは上昇している。これは、需要が高いこと、供給余力が限られていること、産油国政情不安などにより原油が高止まりしていることに大きく起因している。

2004年以降、ガソリン価格が上がっているにもかかわらず消費は落ちていない。むしろ2%の増加だそうだ。アメリカの生活は車と安いガソリンを基本としているので、価格が少々上がったからといって直ぐに車をやめるというわけにはいかない。

全米の精製能力は1700万BDで消費量は2050万DB(そのうち約半分がガソリン)である。その差はヨーロッパや近隣からの製品輸入で補われている。精製会社も2010年までに140万BDの能力増強を計画しているが、明日から増産が出来るわけではない。

もう一つ、今後の製品輸入には品質の問題が絡んでくる。今年からULSDがスタートする。Ultra-low-sulfur-dieselという硫黄分10ppm以下の規格だ。これはヨーロッパの規格よりも厳しいので、ヨーロッパから単純に製品輸入が出来なくなる。

さらにMTBEの使用禁止とエタノールへの移行が決められているが、エタノールの供給不足は13万BDに上るとのAPIの調査結果がある。
いずれにせよ、供給が追いつかない事情に変わりはなさそうだ。

ところで、アメリカのガソリン価格構成は60%が原油代、20%が税金、20%が精製と流通コストといわれている。昨年価格2.25$/galを基準にすると、$1.35が原油代、税金は$0.45、精製流通コストは$0.45となる。
これらはガロン基準なのでリットル当りに換算すると、$0.36が原油代、税金と精製流通コストはそれぞれ$0.12にすぎ無い。為替を117円/$とすれば、アメリカのガソリン価格は69円/Lであり、日本の価格に比べれば半分程度である。これならば多少価格が上がっても、ガソリン消費が減らないというのはうなずける。