化学系エンジニアの独り言

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ブラジルのエタノール燃料

2006-04-12 | バイオマス
Bushの一般教書演説にも今後6年以内にコーン以外の木質チップのようなものからエタノールを製造する、しかも競争力の有る技術を開発するといっている。エタノールについての関心は増すばかりだ。

ブラジルは30年以上前からバイオエタノールの製造を推し進めてきた。今ではガソリンを自給できるという。とくに2002年にワーゲンを初めとした自動車メーカーが「Flex fuel engine」を出してから、加速度的にエタノール対応自動車が売れるようになっている。価格は普通のガソリン車と同じという。ブラジル人はいまや、エアバッグやオートマやワパーウィンドウを省いてでもこのFlex fuelエンジンを選ぶそうだ。
このエンジンはどのような混合割合のエタノールにも対応できる。消費者は価格をにらみながらエタノールを好きなように混合しているという。

アメリカでもバイオエタノールに限らず、バイオ燃料の栽培・製造にかかるエネルギーと得られるバイオ燃料のエネルギーはバランスしているのか、本当にプラスになっているのかという議論がある。
普通に考えれば、プラスにはならないと思われる。アルコールと水の蒸留分離を考えただけでも、エネルギーはマイナスになる。
ブラジルではサトウキビの絞りかす(バガスという)を燃料にして、発電しこの電力を利用するらしい。エタノールの製造に化石燃料は一切使わないという。本当に、と思うところもあるが、そうでもなければエネルギーはプラスにはならない。

ブラジルの研究者によれば、アメリカなどで行なわれているコーンからのエタノール製造のエネルギー収支は使用した化石燃料の1.3倍だそうだ。ところが、ブラジルのサトウキビからのケースでは実に8.3倍になっている。これはサトウキビからの方が収率が高いこともあるが、そもそも使用する化石燃料が極端に少ないためと思われる。

そんなわけで原油が$30/bblになっても競争力があるとしている。わが国でもE3ガソリンのためブラジルからのエタノール輸入を検討しているところであるが、価格的にも充分引き合うらしい。エネルギー源の分散という意味からも望ましいことではあろう。
但し、石油会社にとってはガソリンの生産量だけを3%減らすことになるので、あまり面白くは無いかもしれない。重質原油を購入してガソリンの得率を下げるような方向を探るのであろうか。