化学系エンジニアの独り言

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クリーンディーゼルエンジンの開発

2006-04-21 | 石油
アメリカのBorgWarner社とEPA(環境保護庁)はCDCと呼ばれるクリーンディーゼルエンジンの開発について協力する。EPAが持っているCDC技術を具体的な製品にするためにBorgWarner社が技術とノウハウを提供するというもの。
EPAが開発しているCDCはin-cylinder NOx controlといわれるもので、燃料室でのNOx発生を出力を落とすことなく下げる技術で、そのためには過給器が必要になるわけだが、BorgWarner社はターボ部品と空気制御技術を提供するものである。

ディーゼルエンジンはそもそもガソリンエンジンに比べて燃費が良いので、これの排ガスがクリーンになれば、空気がきれいになり、消費者のガソリン代も安上がりで、中東石油への依存度も減るという一石三鳥の技術である。

このような共同開発の動きが出てくる背景には米国の排ガス規制の強化ということがある。
先にも書いたが、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも効率が高い。しかし、排気ガス(NOx、PM、NMHC)が汚い、振動が大きいなどの欠点が有る。
燃費が良いことからアメリカではバスや大型トラックはディーゼルだが、小型トラックLight Duty(ピックアップ、カーゴバン、ミニバン)や乗用車のディーゼルシェアは4%以下だ。

自動車に関連する規制には燃費規制、排ガス規制、燃料油規制の3種類がある。燃費規制はCorporate Average Fuel Economyと呼ばれ、各メーカーごとに作っている車の総平均値で規制がなされている。現行の規制では乗用車は27.5mile/gal(11.6km/L)、小型トラックは20.7mile/gal(8.7km/L)になっている。これは適時見直しされるが、乗用車と小型トラックの区別をなくして35mile/galに引き上げるという主張をしている議員さんもいるようである。いずれにせよ、燃費改善となるとディーゼルエンジンの活用という方策が注目される。

一方、EPAのTier2という化学物質全般の規制の中に自動車のNOx、PM,NMHC(non methan hydro-carbon)が定められていて、乗用車と小型トラックの適用車種が段階的に広くなっている。
大型ディーゼル車については2007年からNOxなどそれまでの90%に削減するという規制が始まる。規制値をあげれば、NOx0.2、PM0.01NMHC0.14以下である。こちらも段階的に適用比率を引き上げていき、2010年には100%実施としている。これらの規制はとくにPMが肺がんを発生させているという報告書が出されてことから勢いづいたと考えられる。
この2007年以降の規制を達成するためには後処理装置の装備が不可欠である。そこで、後処理装置に悪影響を与える燃料中の硫黄分を下げるという燃料規制が始まった。これは2006年9月から軽油中の硫黄分を500ppmから15ppmに減らすというものである。但し、燃料や潤滑油に含まれる添加剤には多量に硫黄分が含まれているが、こちらには着目されていない。燃料中の硫黄分は後処理装置の触媒を劣化させたり、サルフェートを生成しこれがPMの核になるといわれている。

ちなみに後処理装置にはNOX吸蔵触媒、Diesel Paticulate Filter,酸化触媒、SCR(尿素触媒)、プラズマ排気処理などがある。
このような後処理装置をつけるという現実的な対応を補完するために、クリーンディーゼルエンジン(CDC)の開発が進められているということだ。