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予算から見た研究開発の力点

2006-08-25 | エネルギー
経済産業省傘下にNEDOという研究開発機構があります。独立行政法人ですから、傘下という言い方は良くないのかもしれませんが、これまでの習性でこう呼んでおきます。NEDOでは国のお金を使って研究開発をしていますが、いわゆる補助金を企業や大学の研究機関に出しています。この補助金の額から、国がどの分野の研究を推し進めようとしているのか、平成18年度の金額で見てみます。NEDOの正式名称は新エネルギー・産業技術総合開発機構ですから、研究の主眼はエネルギーといっていいでしょう。もちろん、国のお金としてはバイオマス関連ならが農水省も、温暖化ガス排出抑制に関わる技術には環境省からもお金は出ていますので、NEDOの予算だけで国全体のエネルギー開発の方向性を満遍なく見ることは出来ないでしょうが、おおよその方向はつかめるはずです。

まずエネルギー環境分野に1074億、別途燃料電池・水素分野に205億があります。合計で1279億がエネルギー関連に出されている補助金と見ていいでしょう。

研究には技術開発と導入・普及という段階があります。技術開発は文字通り、研究室内で新しい装置や方法を見つけ出す作業です。研究室でうまくいったものが本当に世の中に出して成果が上がるのかを検証するのが、導入・普及です。技術は研究室同士が世界一を競っているだけではだめで、世の中一般に広く普及して初めて成果が上がりますし、それゆえ税金も投入できるということです。

エネルギー分野は新エネと省エネに大別できます。新エネとは風力、太陽光、バイオマスなどこれまでは使われてこなかった再生可能エネルギーといえます。省エネ技術は言うまでもないでしょうが、家電量販店にいくと省エネテレビ、省エネ冷蔵庫などが目に付くようになりました。
この分け方で予算を見ると技術開発421億、導入・普及で420億と全く同じです。もっと言えば導入・普及にも力を入れているということでしょう。

予算額でみると新エネ412億、省エネ428億でこれもほぼ同額といっていいでしょう。しかし内訳は両者で少々違います。新エネは開発346億、導入・普及66億ですが、省エネは逆に開発75億、導入・普及353億になっています。新エネはまだまだこれから開発しなければならないことが多いのに対して、省エネは開発を終わって導入・普及の段階のものが多いともいえます。あるいは、省エネ技術の開発は民間が独自に行なっており、国はその普及に努めるということでもありましょう。

新エネ技術開発の内訳は、太陽光171億、風力7億、太陽光・風力共通の系統連携45億、バイオマス・廃棄物67億です。数年前から注目を浴びた風力発電関連が少なく、太陽光とバイオマスに力点が置かれていて、風力発電はすでに開発振興を終わり、系統連携に研究課題を残していると考えられます。

燃料電池・水素分野は総額で新エネあるいは省エネの半分程度になっています。マスコミ登場頻度からいくと燃料電池にもっと多くを費やしても言いようにも思われますが、少し先の技術と捕らえているのかもしれません。

内訳では、PEFC(固体高分子形燃料電池)が最も多く56億、SOFC(固体酸化物形燃料電池)はその半分です。水素利用技術は28億ですからSOFCとほぼ同じです。
また、標準化・実証といった導入・普及と同義の項目が88億となっており、燃料電池本体の開発と同額になっています。

まとめてみると、新エネと省エネは同額で燃料電池・水素関連はその半額です。新エネでは技術開発に重点がおかれ、省エネは導入・普及に力点が置かれています。また、燃料電池は開発と導入が半々というところです。新エネ・省エネ全体で見れば、開発と導入に半々の予算付けになっており、この辺は国の予算の付け方なのでしょう。

最後にH18年度の特徴は温室効果ガス削減目標達成のため、排出量取引とCDMに122億が振り向けられていることでしょう。これだけのお金を出して他国からCO2枠を買うのならば、その分を自国の研究開発に当てなさい、という意見はもっともですが、既に高度に開発されている日本のエネルギー関連技術を今一段引き上げるのは、容易い事ではないという認識に立つことも必要です。

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