化学系エンジニアの独り言

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排出権取引

2006-05-17 | 環境
CO2排出権取引のお話。

先週、欧州で年に1回公表されるデータがインターネット上に誤って流れてしまったそうだ。予定より3日早かった。各国が自国の企業のCO2排出量を多く見積もりすぎていてCarbon creditを必要以上に持っていることが分かった。企業は自分のCO2排出量を多くしておきたいので、政府はどうしても多めに見積もってしまう傾向になるのは仕方が無い。

問題はCarbon creditが余っていることが予定より早く公表されてしまったことで、市場参加者から売りが殺到し、一気に31ユーロ/トンから22ユーロ/トンまで9ユーロ近くも下落したこと。
市場にVolatilityはつき物だが、排出権市場はその日の参加者が30-40と少ないので変動が大きくなってしまう。
さらにデータの公表が年1回というのはあまりに少なすぎ、少なくとも四半期に1回は公表するよう政府に要請している。

排出権取引はロンドンで2002年4月から始まり、現在は400口座がある。2005年の取引額は$10Billion、2006年は$30Billionを見込んでいる。日本でも環境省が2006年4月から開設し、現在の参加者は70社である。

排出権取引が本当に排出量を減らすことに、経済的にも効率的にも有効であるのかは疑問のあるところだ。取引は排出量削減に寄与しないという意見もある。

Carbon creditが余る人(場合)と足りない人(場合)があるから、取引が成立する。しかし市場になると実需とは関係の無い参加者が増え、実需以上の量が取引されるようになる。いい例がWTIである。但し、市場での取引量が増えるといつでも取引が出来るということとなり、それなりに利便性はあがる。このあたりは、排出権に限らずすべての市場の持つ意義ということになるのだろう。

ところでCarbon creditが余るとか足りないというのは、目標値あるいは制限値があるからだ。それがKyoto議定書になるが、途上国は参加していない。参加出来るわけが無い。これから経済発展を目指している国にとって、エネルギー需要が増すことは当たり前なわけで、先に発展をしてしまった国が一方的に途上国に対して、制限を付けることはできない。核兵器も同じような議論になる。しからば各国が好き勝手にやってよいかといえば、その先には大変な世界が見えるので何とかブレーキをかけたいのは皆同じ。総論賛成、各論反対の状態になる。

とすると、取引市場はそれなりに役割を果たすことが出来るのかもしれない、と期待をかけることも出来ようか。

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