H2A23号機は、JAXAが米航空宇宙局(NASA)などと共同開発し、地表に降り注ぐ雨を高精度に観測する「全球降水観測
計画主衛星」を軌道上に運んだ。今後は陸上の観測技術を高めて地図作製などに役立つ人工衛星「だいち2号」を、14年度の早い時期に打ち上げる見通し。
14年度中には気象衛星「ひまわり」8号機や、10年に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」の後継機、災害時に地上をレーダーで調べる情報収集衛星などもH2Aで宇宙に運ぶ。従来の年間打ち上げは2~3回の場合が多かったが、大量打ち上げの時期を迎える。
これまで国産大型ロケットはH2Aが23回の打ち上げで22回成功し、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を届ける無人補給機「HTV(こうのとり)」を運ぶH2Bは4回すべて成功している。合わせて成功率は96.3%で打ち上げ時刻の変更も少なく、技術面での信頼性は高い。
国・ 地域 |
ロケット名 | 打ち 上げ 回数 |
成功率 (%) |
搭載能力 (トン) |
---|---|---|---|---|
日本 | H2A | 23 | 95.7 | 4~6 |
欧州 | アリアン5 | 72 | 94.4 | 6.6~9.6 |
ロシア | プロトン | 72 | 91.7 | 6.3 |
米国 | ファルコン9 | 8 | 100 | 4.85 |
(注)三菱重工業の資料から作成。H2Aは2月28日、他は20日時点
ただし実績では海外勢に後れをとる。ロシアのプロトンロケットは運用開始の01年から約70回、欧州のアリアンロケットも02年からの最新型を約40回打ち上げている。一方でH2AとH2Bの実績は27回にとどまる。
世界では商業通信衛星の打ち上げ需要が年間20機前後あるとされるが、過去の実績が豊富なロシアと欧州の寡占状態が続いている。ハイペースの打ち上げは日本勢の評価を高め、受注獲得につながる効果が見込める。
政府は14年度、H2Aの後継機に当たる新型ロケット「H3」(仮称)の開発に着手する方針。打ち上げコストは現状かかっている百億円の半分に抑え、20年に初号機打ち上げを目指す。H2Aで蓄積した技術と評価をH3に引き継ぎ、コスト競争力も高めて世界の衛星打ち上げ市場で存在感を高めていく構えだ。