福島木工家具店

製作した家具の紹介と日記

漆塗り

2015-04-10 22:56:07 | 製作記録
初めてです。

漆塗り。

ちょービビっております。






屋久島へ移住してから、今まで何度もハゼ(ハゼノキ ウルシ科)負けして酷い目にあっております。

もともと皮膚は子供のころから弱くデリケートなのです。


木工家具の塗装方法の一つに漆塗りがあるのですが、

これだけはやる事は無いでしょうと思っておりました。

かぶれることが分かっているのに、何もわざわざ自分から火中の栗を拾うことをするはずがありません。


ですが、

お客様が漆塗りの方が良いと改めておっしゃるのです。

一度目の試作の時は、漆風のアクリル塗装で済ましたのですが、

やはり、漆塗りの方が良いと・・・


どうも避けて通ることはできないようで、

まあ、いずれにせよ、いつかは通過しなくてはいけない試練なのでしょう。


という訳で、腹をくくりました。


といっても怖いのには変わりなく、

このために、こんなフェイスガードを購入し、

昔買ったつなぎ(自動車修理屋さんが着てるような作業着)を引っ張り出してきて、

手袋は使い捨てのドクターが着けているようなものを購入して万全の準備を整えることに。


怖い怖いと思いながらの作業。

スタートして15分ほど経ち、ふと左手袋の指先に何か違和感が・・・

中指が妙に黒くなっている、どうも手袋の表面でなく、

指が黒くなっているように見える。

視界がしばらくフリーズし、

何が起こっているのか、これはどのような状況なのかを判断するのに数秒を要した後、


あ゛ーーーーーーー


目を疑いたいのですが、そういう訳にもいかず、

慌てて手袋を脱ぎ捨て、薄め液で洗浄して、石鹸でこする。


一番あってはならないことを、作業の初っ端からしてしまいました。

薄い手袋とは判っていたのですが、あまりにも耐久性無さ過ぎです。


そういえば、購入するときに2種類あって、パウダー付き(中がべたべたしない)のランクの良い方を選んで安心していたのですが、

ちょっとべたつきにくいという快適性がよいだけで、手袋の強度には関係なかったと、今更ながらに思うのでありました。


一気にテンションが落ち込みました。

と同時に、左指が、いや左腕が、いやいや左半身が、結局は全身がボコボコに腫れあがる悪夢が脳裏をよぎります。


ああ、いやだ、いやだ。

と言っても、しょうがないので作業再開。

手袋は普段使っているものに変えました。

指先はゴム状になっているので厚みはあるのですが、手の甲の表は布生地で通気性があるので要注意です。


ショック状態の中、黙々と作業を進めるうちに、

少しだけ余裕が出てきて、やることは無いだろうと思っていた漆塗り、

漆塗り職人が塗りあげていく手さばき、そして漆の塗られた工芸品の発色の美しさ、

ああ、すごいなあーと漠然と思っていたことが、今こうして現実に自分がやっていると思うと、

なんだかちょっと感慨深いものがあります。


怖くて嫌な作業だと思っていたのですが、素の木地に漆を乗せて、ヘラで伸ばしていくと色が飴色になって綺麗です。

ああ、漆って凄い塗料だなあー、自分の家具作品にも使ってみたいなあー、

そうだ、まずはテーブルに漆を塗ってみたいなあー、そして次はアレに、コレなんかに塗ってみるのもいいかも、

アレもコレも漆塗りにしたら高級感がでるのだろうなあ、それ以前に、漆の強度には期待できるし、

などなどと考えているうちに、漆塗りが楽しくなってきました。

そうだ、まずは漆と友達にならなくてはと思い、

改めて漆の塗料を見てみると、なんだか親近感が湧いてくるではありませんか。


後日、どんな状態になろうとも、漆には罪は無いと、心に誓うのでした。







↑ 手前は塗る前、奥は一度塗りしたもの。


コメント
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