東京大空襲②｜軍事施設もなく燃えやすい木造民家住民の殺戮を目的にした焼夷弾爆撃／少数派

　少数派シリーズ／二度と戦争を繰り返すな
東京大空襲②｜軍事施設もなく燃えやすい木造民家住民の殺戮を目的にした焼夷弾爆撃


１９４５（Ｓ２０）年１１月撮影｜空襲から半年過ぎても焼野原のままの本所一体。中央左の建物が、後の東京
都慰霊堂。焼夷弾の特性により鉄筋コンクリートの建物は破壊されない一方で、木造家屋は完全に燃え尽きた。

■一晩で１０万人以上の焼死、その大半が女性・子供・高齢者だったことの残虐性
前号からの続きで、終戦直前の１９４５（Ｓ２０）年３月１０日未明、Ｂ２９米国爆撃機３２５機が低空飛行で東京の下町に大挙飛来、次々と焼夷弾（しょういだん）を降らせた。日本家屋の場合、火薬爆弾より焼夷弾のほうが燃えて大量殺戮できる米国の実験検証により実施された。一晩で、１０万人以上が焼死した。日本軍がそれまで占領していたグアム島や現・北マリアナ諸島が次々と陥落し、北マリアナ諸島のサイパン島から日本へは約２４００ｋｍ離れており、日本全土への爆撃が可能の距離になった。航続距離９０００ｋｍ以上の能力を持つＢ２９が開発・大量生産され、日本国民の焼死目的“皆殺し作戦”を虎視眈々と準備していた。その結果、東京のみならず大阪や日本全国への空襲が激しくなり５０万人が死亡した。「東京大空襲」敢行時は、サイパン島の南・テニアン島から複数の滑走路を使って、３２５機全機が飛び立つまで２時間半以上を要した。一説には冬場の東京は北風が強いことを事前に把握しており、軍事施設がないにも関わらず現在東京スカイツリーがある本所区（現墨田区の一部）周辺に意図的に焼夷弾の雨を降らしたと言う。折からの風（当日は北西）に煽られ、離れた風下の深川区・城東区（現江東区）のほうが火災焼失が激しかったのだ。

米国は、これら一帯に住んでいる人のほとんどが女性や子供・高齢者であることを認識していた。多くの“非戦闘員”を効率よく焼き払って殺し、日本の戦意を喪失させようとした米国の「住民標的爆撃」作戦に他ならない。東京大空襲の前年１９４４年時点で、本所区に４３．８万人、浅草区（現台東区の一部）４０．３万人、深川・城東区に３９．６万人の計１２３．７万人が住んでいた。しかし戦後の４５年１１月には、浅草８．４万人・本所７．７万人・深川城東２．５万人、計１８．６万人と元の１５％の人口しかおらず、下町が壊滅的な被害を受けたことが数字からも読み取れる。特に風下にあった、深川城東は６％に過ぎない。親を亡くした孤児が多数存在した。ところで約３万人分の犠牲者の氏名や住所が記載された「都内戦災殉難者霊名簿」から、年齢が分かる犠牲者１３１７０人が調べられた。内訳は１９歳までが４０％、２０代１３％、３０代１２％と若者の多くが殺された。男女別では女性が５７．６％を占めた。学童疎開で北関東などに長期避難していた学童・生徒が、３月の卒業式や年度末休みを迎え大勢戻って来ていたことも１０代の死者を増やした。当時、成人男性は戦争に駆り出されており、繰り返すが女性・子供・高齢者のいわゆる「非戦闘員」を狙った大量虐殺であることは間違いない。

■米国の残虐性は許されないが、そもそも戦争を仕掛けたのは日本であることを忘れてはならない
現在のガザ地区やウクライナ侵攻によるウクライナ・ロシア両国の兵士・民間人の死者が発表されているが、それにはかなりの死者がカウントされていない。混乱が背景にあり「東京大空襲」の実際の死者も不確かで、まだまだ死者は大勢いると言われる。後号で案内するが、当時は異臭が漂うあまりにも多数の遺体が道などに横たわり腐敗が進むことから、身元不明のまま次から次へと埋葬された。前号のセンシビリティーな内容通り、至る所に放置されたままの遺体が眼に入り、また公園や神社仏閣に穴を掘ってそのまま埋めることが目撃された。そのため感情を失い顔から表情が消えてしまった女性を始め命からがらで助かっても、その後に今で言うＰＴＳＤにより悲惨な生活をする人が多かったと言う。米国の残虐性を許すことはできないが、忘れてならないのは「戦争」を仕掛けたのは日本の軍部＋政治家＋煽られた一部の国民であることだ。申し上げたいことは、昔も今も・日本も外国も国の主要者が戦争を始め、死ぬのは何の落ち度もない国民とりわけ若い方なのだ。絶対、戦争を起こしてはならない。＜次回に続く・２６年２月頃＞

【ご連絡】今年は敢えてここらに留めておき、続きは毎年今頃に投稿します。８０年以上経とうが、忘れてはならないことだからです。今後の予定内容をピックアップします。
▽錦糸公園（墨田区）・猿江公園（江東区）グランドや周辺の神社仏閣は仮埋葬場所だった。
▽市民に「逃げるな」「火を消せ」と消化義務を負わせたために、逃げ遅れて多くの方が亡くなった。
▽空襲で全国各地の軍事施設が狙われ、巻き添えに１万４千人の市民が殺された。
▽投稿者は東京大空襲・戦災資料センター（江東区）で本物の焼夷弾を見た。
▽クラスター爆弾に近い焼夷弾の構造と仕組み、殺傷効果を分析する。
▽下町は廃墟となったが、戦争終結へ向けて皇居や国会周辺は空爆しなかった。


前号／東京大空襲①｜今年で８０年・一晩で１０万人以上が焼死、明らかに民間人の殺害を狙った残虐性