少数派シリーズ/交通網
知床観光船沈没事故6・検証◇国の「規制緩和」が旅客船業者の競争激化・安全の蔑ろ
■船舶免許の取得は普通自動車免許より遥かに容易、知床遊覧船の事故は必然?
前号では、国交省の検査・監査の甘さを指摘した。船舶の安全にはかなり問題が多く、専門家は船舶免許取得の“緩さ”を訴える。例えば、「二級小型船舶免許」の例だ。20トン未満の船舶、24m未満のプレジャーボート、沖合5海里(海岸から約9km)まで操縦できる。2020年度の受験者9941人のうち、合格者9680人、合格率97.4%。100人で3人も落ちない。外洋航行ができる一級免許にしても、合格率が92.5%。一定期間の技能経験がなくてOK。視力も0.5以上でいいのも気になる。呆れるほど短時間の実技と簡単な試験問題で取れる、“落ちない試験”と言われる。荒れる気象や海流などかなり難しい試験の印象があるが、バス・大型トラック向けの大型二種どころか普通自動車免許取得より遥かに容易なことが分かった。旅客船や遊漁船など人の運送をするにも関わらず、これでは不適格者が何万人もプロの船長をやっている可能性がある。女子アナやタレントが、よくプロフィールに「船舶免許」とか書かれているのが気になっていた。「努力の賜物」ではなく、単なる”履歴を飾る資格”に過ぎなかったのだ。前述の専門家は、「国の船長に対する資格、安全に対する意識が猛烈に低い」と語気を強める。その結果、知床遊覧船の事故は必然だったと言う。国の制度の欠陥、免許を乱発してきたツケが出てきていると断罪する。
投稿者がもう1つ強く言いたいのは、「安全より利益優先の新規参入業者を許した、国による『規制緩和』がもたらした影響」を説明する。1990年代から政府は経済政策として、各分野で『規制緩和』が進められた。国交省は「市場原理と自己責任原理の下に競争を促進」として、1995年、遊覧船の自由参入が容易となった。結果、新規参入者が増え、上のグラフのように96年413社だった事業者が21年には560社と147社・36%増となった。知床遊覧船会社は、2001年、事業の許可を得た。参入基準を緩めれば競争激化になり、「安全より儲けを優先する事業者の参入」は当然だ。そもそも最も安全が求められる船舶まで何も自由化させる必要はなく、自由化させた国交省の責任=間違いは重い。さて沈没事故後に参院選が控えていたので、慌てた政府・国交省は、すぐさま世界有数の日本のサルベージ会社に沈んだKAZUⅠの引き上げを要請。10億円を掛けて、人道的な“演出”を企てた。当然、知床遊覧船側は支払いできず、事実上の肩代わりの税金使用だ。国交省は、検査等の不備・瑕疵が国民から追及されないように迅速な動きを見せた。繰り返すが、知床遊覧船側の無責任は許されないが、事故に至るまでの数十年に渡る政府・国交省の怠慢・法や機能の整備不足は重大だ。皆様にはぜひ事故の裏側や、真の責任がどこにあったのかを知って欲しい。
次号/知床観光船沈没事故7・検証◇船長や責任者が緊急避難港の存在を知っていれば全員助かったかも
前号/知床観光船沈没事故5・検証◇船舶管理者の安全意識が緩むのは国交省の緩い検査
知床観光船沈没事故6・検証◇国の「規制緩和」が旅客船業者の競争激化・安全の蔑ろ
■船舶免許の取得は普通自動車免許より遥かに容易、知床遊覧船の事故は必然?
前号では、国交省の検査・監査の甘さを指摘した。船舶の安全にはかなり問題が多く、専門家は船舶免許取得の“緩さ”を訴える。例えば、「二級小型船舶免許」の例だ。20トン未満の船舶、24m未満のプレジャーボート、沖合5海里(海岸から約9km)まで操縦できる。2020年度の受験者9941人のうち、合格者9680人、合格率97.4%。100人で3人も落ちない。外洋航行ができる一級免許にしても、合格率が92.5%。一定期間の技能経験がなくてOK。視力も0.5以上でいいのも気になる。呆れるほど短時間の実技と簡単な試験問題で取れる、“落ちない試験”と言われる。荒れる気象や海流などかなり難しい試験の印象があるが、バス・大型トラック向けの大型二種どころか普通自動車免許取得より遥かに容易なことが分かった。旅客船や遊漁船など人の運送をするにも関わらず、これでは不適格者が何万人もプロの船長をやっている可能性がある。女子アナやタレントが、よくプロフィールに「船舶免許」とか書かれているのが気になっていた。「努力の賜物」ではなく、単なる”履歴を飾る資格”に過ぎなかったのだ。前述の専門家は、「国の船長に対する資格、安全に対する意識が猛烈に低い」と語気を強める。その結果、知床遊覧船の事故は必然だったと言う。国の制度の欠陥、免許を乱発してきたツケが出てきていると断罪する。
投稿者がもう1つ強く言いたいのは、「安全より利益優先の新規参入業者を許した、国による『規制緩和』がもたらした影響」を説明する。1990年代から政府は経済政策として、各分野で『規制緩和』が進められた。国交省は「市場原理と自己責任原理の下に競争を促進」として、1995年、遊覧船の自由参入が容易となった。結果、新規参入者が増え、上のグラフのように96年413社だった事業者が21年には560社と147社・36%増となった。知床遊覧船会社は、2001年、事業の許可を得た。参入基準を緩めれば競争激化になり、「安全より儲けを優先する事業者の参入」は当然だ。そもそも最も安全が求められる船舶まで何も自由化させる必要はなく、自由化させた国交省の責任=間違いは重い。さて沈没事故後に参院選が控えていたので、慌てた政府・国交省は、すぐさま世界有数の日本のサルベージ会社に沈んだKAZUⅠの引き上げを要請。10億円を掛けて、人道的な“演出”を企てた。当然、知床遊覧船側は支払いできず、事実上の肩代わりの税金使用だ。国交省は、検査等の不備・瑕疵が国民から追及されないように迅速な動きを見せた。繰り返すが、知床遊覧船側の無責任は許されないが、事故に至るまでの数十年に渡る政府・国交省の怠慢・法や機能の整備不足は重大だ。皆様にはぜひ事故の裏側や、真の責任がどこにあったのかを知って欲しい。
次号/知床観光船沈没事故7・検証◇船長や責任者が緊急避難港の存在を知っていれば全員助かったかも
前号/知床観光船沈没事故5・検証◇船舶管理者の安全意識が緩むのは国交省の緩い検査