月刊パントマイムファン編集部電子支局

パントマイムのファンのためのメルマガ「月刊パントマイムファン」編集部の電子支局です。メルマガと連動した記事を掲載します。

アーティストリレー日記(58)un-pa(重森一)さん

2015-11-16 07:06:27 | アーティストリレー日記
今号では、大道芸および舞台で超個性的なパフォーマンスで活躍し、コアなファンも多いun-pa(重森一)さんに「最近はまっていること」をテーマに日記をご執筆頂きました。

最近はまっていること…と聞かれて思いつくのは、ここ数年のスパンで思い返すと映画を観ることでしょうか。10年ぐらい前までは映画館に足を運ぶことも年に何回かといった感じでしたが、最近では「映画館で三本ハシゴ!」ということも珍しくなくなってきました。

最近劇場で観て本当に良かった映画は「マッドマックス 怒りのデスロード」です。往年のカーアクション映画「マッドマックス」シリーズの30年ぶりの新作で、すでにいろんな人が語りつくしている作品ですが、この作品のなにが良かったかというと「画で物語っている」ということにつきます。冒頭に世界設定のナレーションが入ったあとは余計な説明一切なし!世界観なども美術や登場人物の行動で「描写」して、説明的なセリフがなくとも必要な情報が観客に伝わってきます。いやむしろ余計な説明で意味を限定しないぶん観客の頭の中で想像が膨らむので、より豊かな表現になっています。
アクションに関しても極力CGを使わずアフリカの砂漠でのロケ撮影、実際の車によるカースタント、生身の肉体によるアクションなど、最近の映画に失われてきた「カラダを張ってナンボ!」といった空気がビンビンに伝わってきます。ストーリーは非常に単純ですが、だからといって中身のない薄っぺらいものではありません。「自由」や「世界」というものを考えさせられる非常に寓話性に富んだ内容だと思います。

そしてもう一本今年観た中で印象に残るのは塚本晋也監督作品「野火」です。フィリピンでの戦争体験を描いた作品ですが、とにかくこの映画がすごいのは超低予算の自主製作による戦争映画だということです。たしかに画面からは「予算かかっていないんだろうなぁ」という印象はありますが、でも決して安っぽい映画ではありません。予算をかけられないぶん見せ方の工夫によって戦争の悲惨さを際立たせています。
スポンサーがつかず、結果として自主制作となった作品ですが、「自主制作でもここまでできる」「余計な口だしをする出資者がいなかったからここまでの内容ができた」という意味でも表現に携わっている人たちに観てもらいたい作品です。資金を回すため、誰かの顔色をうかがいながら作られている作品が多いなか、この作品が公開されたのは非常に重要だと思います。

この二つの作品が素晴らしいのは「経済効率」や「マーケティング」といった外側の理屈ではなく「創りたいものを創る!」といった作者の意思がビシビシと伝わってくるからです。そういうものこそが「創作」であり「作品」であると思います。そんな風に観客に届く作品を私もつくりたいものです。

un-pa 重森一
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする