月刊パントマイムファン編集部電子支局

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アーティストリレー日記(97)石崎一気さん

2019-02-24 09:03:17 | アーティストリレー日記
今号は、JIDAI氏に師事し、劇団ぷにぷにパイレーツを主宰している石崎一気さんの日記をお届けします。

★「不思議な体験」                

僕が主宰する“劇団ぷにぷにパイレーツ”は、今年1月、第38回公演として「右手のための小品集」を開催しました。出演者は僕一人きりで、自ら作・演出した3本の作品を、およそ70分に渡って披露しました。3作品中、セリフやストーリーがあるのは1本だけで、そのセリフの時間も10分程度に抑えました。あとはすべて体の動きで表現していったので、ほぼパントマイムのソロ公演となってしまいました。

僕がパントマイムに関心を持ったのは、劇団を旗揚げした12年前です。舞台セットや大道具などを準備する代わりにパントマイムの演技でさまざまなものを表現できれば、経費と手間を大幅に削減できると考えたのです。

そこで僕は、アートマイムの第一人者・JIDAIさんに師事しました。たまたま体験レッスンを受ける機会があり、内容が素晴らしかったので続けていくことにしたのです。
JIDAIさんのレッスンは、一般的にイメージするパントマイムとは一味違うものでした。もちろん「壁」「ロープ」「風船」といったイリュージョン・テクニックも教えて下さいますが、それと同様に、心と身体がつながるためのトレーニングを重視するのです。エンタテインメントとしてのマイムをイメージしていた僕は、当初、何をしているのか良く分かりませんでした。しかし、練習を続けていくうちに、JIDAIさんが標榜されている「マイムから心と身体の平和を」という言葉の意味が、なんとなく分かるようになってきました。同時に、宇宙や生命の根源となるエネルギーの表現に関心が移っていきました。僕の作品も、特定の人物の面白い出来事を描くものではなく、普遍的な存在の普遍的感情を描くものにシフトしていったのです。

1月の公演では、お客様から「面白かった」という感想は、ほとんど聞かれませんでした。その代わり、多くの方が「不思議な体験をした」とおっしゃっていました。
不思議な体験のうち、最も多かったのが「色が変わる」というものです。僕が全身からオーラを放っていて、シーンに応じて青・赤・紫・緑と色が変化しているように見えたそうです。
また「舞台上に磁場のようなものが見えた」とおっしゃる方も少なくありませんでした。僕が動くと、空間がひん曲がっていくそうなんです。なかには「舞台の床が液状になり、波打っていた」という声もありました。
さらに「自分が宇宙空間を漂っていて、無重力状態になった」「暗黒の中をどこまでも落ちていった」など、ご自身に変化を感じた方もいらっしゃいました。

僕は、お客様に不思議な体験をしてもらおうと思って、作品を作っているわけではありません。しかし、公演を重ねるたびに、不思議な体験をする人の数が増えているのは間違いありません。これは、僕がほんの少し、心と身体と空間をつなげられるようになってきた証ではないかと思っています。さらなる高みを目指して、一層、稽古に精進していきたいと思っています。

石崎一気
コメント
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