今回は、10月に「幻の蝶」45周年記念公演を上演する清水きよしさんの日記をお届けします。リレー日記5回目のご登場です。
77歳、喜寿。良いことづくめの歳になると思っていたのにまさかの引っ越しを余儀なくされ、近年になく落ち着かない日々を送っています。
7月に仙台で公演した「KAMEN」を最後に本格的な舞台は全くなし。
異様な暑い日々、バテバテになりながら引っ越し先のリフォーム、そして11年過ごした古民家の後片付けに追われています。
9月末には全てスッキリの予定だが遅れに遅れ、10月も近づいて少々焦り気味です。
ところで仙台での「KAMEN」は東京以外で行う最後の自主企画/制作による舞台になりました。ほぼ毎年続けてきた東京での「幻の蝶」「KAMEN」は今後も体が動く限り継続していくつもりですが、両作品共に東京を出て自分で舞台を作る事はもう無くなります。
思えば57年に及ぶマイム活動になりますが、ただでさえマイナーなパントマイムの舞台はお声が掛かるのを待っていたら永遠に自分の作品を観てもらえる場はやってこない。
ましてや、自分の生活圏以外ではそのチャンスは皆無に等しいだろうと思い、イベントなどに呼んでいただいた時にできた小さなご縁や、友人知人に半ば強引に協力して頂きながら舞台を作ってきました。
地方での公演の8割くらいは自主公演だったと思います。
イベントで稼いでは舞台に注ぎ込む、好き放題に舞台に注ぎ込んでしまう私は家族にどれ程迷惑をかけてきたことか。
でもそういう活動だったからこそ、得難い貴重な思い出には恵まれてきたと言えましょう。
数多くの想い出を語りだすとキリがなくなるので省きますが、恵まれたマイム人生である事は間違いありませんね。
さて、この歳になっての引っ越しは思った以上に過酷です。しかもこの暑さですから作業は遅々として捗らない。暑さは最大の敵ですがもう一つは77年という歳月の重さ。
個人的な家族との歴史、そして57年にというマイム生活の歴史を改めて思う日々になりました。写真や資料を整理しながら手が止まってしまうことがしばしば。
「断捨離」だと思って始めたのだけれど、いまは「生前葬」ならぬ「生前遺品整理」だと言うのが実感です。
想い出って結局は自分にとっては自分が生きているうちだけのもの。基本的に舞台は生物(なまもの)が持論の私には映像化された記録にも未練はない。数百本のビデオが出て来たのだけれど、丁寧に保存しようと言う気が無かったのでカビだらけ。結局一部を残して全てを燃えるゴミとして処分しました。少なくとも自分で見返す時間などないしね。
ということで、物も過去の記録も捨てていくことで、身も心も軽くなっていく様です。
これからの残された時間は、寅さんの様にカバンひとつで好きなマイムを持ってあちこちに行くことを夢見ています。
そう車も手放したのでテクテクとね。
これがもしかしたら「喜寿」の幸いになるのかもしれないですね。
最後に宣伝をひとつ。
10月19日(土)16時、20日(日)14時から青山の銕仙会の能舞台で今年も「幻の蝶」を行います。ぜひ足をお運び下さいます様お願いします。
詳細やご予約は公式サイトをご覧ください。
https://maboroshino-chou.com
清水きよし