映画「ジョーカー」監督 トッド・フィリップス
ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ
孤独で心の優しいアーサー(ホアキン・フェニックス)は、母の「どんなときも笑顔で人々を楽しませなさい」という言葉を心に刻みコメディアンを目指す。ピエロのメイクをして大道芸を披露しながら母を助ける彼は、同じアパートの住人ソフィーにひそかに思いを寄せていた。そして、笑いのある人生は素晴らしいと信じ、底辺からの脱出を試みる。
心を病み、それでも人々に笑いを提供する貧しい大道芸人が、社会からの孤立や資本主義がもたらす貧富格差といった膿汁で肺を満たされ、呼吸困難からあえぐように悪の水面へと浮かび上がっていく。苦しいのか、それとも開放感から出る笑みなのか分からぬ表情で。
このようにジョーカーこと主人公アーサー(ホアキン・フェニックス)は、自ら道を選んで悪の轍を踏んだわけではない。そこにはダークヒーローなどといった気取ったワードとは無縁の、逃れられない運命の帰結として悪が存在する。人生に選択の余地を与えぬ、容赦ない哀しみの腐臭を放ちながら。
“狂っているのは僕か? それとも世間か???“ ドーランを血に代えた、悲哀を極める悪の誕生を見た後では、ジョーカーへの同情が意識を遮断し、もはやバットマンに肩入れすることなどできない。なんと恐ろしい作品だろう。(尾崎一男)映画.com
ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ
孤独で心の優しいアーサー(ホアキン・フェニックス)は、母の「どんなときも笑顔で人々を楽しませなさい」という言葉を心に刻みコメディアンを目指す。ピエロのメイクをして大道芸を披露しながら母を助ける彼は、同じアパートの住人ソフィーにひそかに思いを寄せていた。そして、笑いのある人生は素晴らしいと信じ、底辺からの脱出を試みる。
心を病み、それでも人々に笑いを提供する貧しい大道芸人が、社会からの孤立や資本主義がもたらす貧富格差といった膿汁で肺を満たされ、呼吸困難からあえぐように悪の水面へと浮かび上がっていく。苦しいのか、それとも開放感から出る笑みなのか分からぬ表情で。
このようにジョーカーこと主人公アーサー(ホアキン・フェニックス)は、自ら道を選んで悪の轍を踏んだわけではない。そこにはダークヒーローなどといった気取ったワードとは無縁の、逃れられない運命の帰結として悪が存在する。人生に選択の余地を与えぬ、容赦ない哀しみの腐臭を放ちながら。
“狂っているのは僕か? それとも世間か???“ ドーランを血に代えた、悲哀を極める悪の誕生を見た後では、ジョーカーへの同情が意識を遮断し、もはやバットマンに肩入れすることなどできない。なんと恐ろしい作品だろう。(尾崎一男)映画.com