10時8分に長島ダム駅を発車、右手に広がる長島ダム湖の輝く湖面をしばらく眺めました。前回よりダム湖の水位が下がっていたので、景色がちょっと変わっているようにも見えました。
10時12分にひらんだ駅を発して、ダム湖の奥の接岨湖を右手に見ながら進むうちに、井川線で最も人気がある奥大井湖上駅への接近を案内するアナウンスが車内に流れました。同時に、列車のスピードがゆっくりと徐行になりました。周辺の素晴らしい景色を楽しんで貰うための徐行運転でした。前方には、5月上旬の巡礼時に降りた奥大井湖上駅への鉄橋および湖上のホームが見えてきました。
レインボーブリッジにはさまれた接岨湖上の天空の駅と謳われてテレビ番組などでも放送され、2016年には「 一度は行きたい絶景CMロケ地TOP10」に選ばれて更に人気を集めた奥大井湖上駅へだんだんと近づいてゆきました。
この駅が、ゆるキャン原作コミック第11巻56、57ページにも登場して各務原なでしこが降りたため、ファンが全国から聖地巡礼に訪れるようになり、ますます知名度と人気が高まっているようです。
向かって左側の接岨湖の湖岸沿いには、ダム湖で水没した旧井川線の線路や橋梁が見えました。この日は接岨湖の水位がかなり下がっていたため、他でも各所で水没した線路が見えたりしました。
10時18分、奥大井湖上駅に停車。20秒ほど後に発車。今回は降りずに、駅名標を記念に撮り、奥大井湖上駅の先へと思いを馳せました。
次の接岨湖温泉駅には10時23分に着きました。ここで千頭へ向かう折り返しの列車とすれ違いました。あちらは電気機関車が先頭になって牽引していましたが、私たちの列車も終点井川駅で折り返しますから、後尾に付いている電気機関車が先頭になるわけです。
10時32分に尾盛駅を出て数分後、また車内に案内アナウンスが流れました。これから「関の沢橋梁」を渡りますので、列車が徐行いたします、との内容でした。この「関の沢橋梁」は、川底からの高さが70.8メートルを測る、日本でもっとも高い鉄道橋として知られます。
上図はその「関の沢橋梁」の鉄橋を渡り始めたところです。高所恐怖症なので直に下を見ることが出来ず、窓からデジカメだけ突き出してモニターを見ながら撮りました。下の川が全然見えないじゃないか、どんだけ高いんだ、と背中に這い登ってくる寒気をゾクゾクと感じました。
ですが、次の瞬間に川底が見えました。その周囲の紅葉まじりの緑の上に鉄橋と列車の影が落ちているのを見た途端、その光景の珍しさに恐怖を忘れ、思わず窓に貼りつきました。
日本最高所の鉄橋から見下ろす我々の列車の影。なかなか見られない景色を見ました。素晴らしい、としか言いようがありませんでした。
10時42分、閑蔵駅に着きました。次が終点の井川駅になります。
このあたりの線路は大井川の川面よりも遥かに高い位置にあるので、景色が御覧の通りでした。川が恐ろしいほどの下方に見え隠れし、連綿と屹立する奥静の山岳地帯の景観が終わり近い紅葉の色をまとって流れてゆくのでした。この大パノラマビューが、ここ井川線独特の景観として大勢の観光客を惹きつけているのでした。 (続く)