15時26分に接岨峡温泉駅を出ました。まもなく左手に、前回7月に訪れた接阻峡大吊橋と長島公園の広い駐車場が見えました。あの駐車場まで千頭駅からレンタルの志摩リンビーノで走って、接阻峡大吊橋からの八橋小道を歩いたのでした。
15時32分、奥大井湖上駅を出ました。まだ16時にもなっていないのに、日は大きく傾いて早くも夕方の気配があたりに漂い始めていました。山奥の晩秋の雰囲気そのものでした。
15時40分、長島ダム駅に着きました。ここからアプト式電気機関車を繋ぎますので、数人の乗客がホームに降りて機関車の前へ見物に行きました。私は窓を全開にして身を乗り出して、ゆるキャンで言うところの「プッピガン」こと連結作業を見守りました。
奥に待機していたアプト式電気機関車が動き始めて、ゆっくりとこちらに向かってきました。
車掌さんが手旗信号を振って合図するのに合わせて、アプト式電気機関車が徐々にスピードを落としつつ近づきました。
車掌さんが手旗を頭上に挙げて小刻みに振りつつホイッスルも吹いて慎重に合図を送りました。カタンという音とともに列車内にかすかな振動が響いて、アプト式電気機関車との連結が行われたのが感じられました。
連結後の作業を素早く行う車掌さんに、機関車の運転士が加わって安全確認の指さしを左右へ向けていました。それを見て見物の乗客たちもそれぞれの客車に戻り始めました。
アプト式電気機関車に押されて登ってきて、駅ホームに停まっていた井川行きの列車が15時42分に発車してゆきました。その2分後の15時44分にこちらの列車も発車してアプト式区間に進みました。
90パーミルの急勾配区間の途中で長島ダムを見ました。一度目は歩いて行き、二度目は志摩リンビーノで渡り、三度目は列車から見ましたので、ゆるキャン聖地巡礼では馴染みのダムになりました。
続いて、各務原なでしこ達がキャンプしたアプトいちしろキャンプ場も見えました。ちょうど秋キャンプのシーズンでしたから、大部分のサイトが埋まっていてなかなかの盛況でした。下段のサイトはほとんどが車で入っているので、オートキャンプ場に分類されるようです。上段と左奥がフリーサイトになるようですが、テントはあまり見えませんでした。
急勾配区間を降り切ったところで後ろを振り返りました。ダムもキャンプ場も谷間に隠れてしまいました。列車はカーブでやや減速を繰り返しながら大井川沿いにアプトいちしろ駅へと進みました。夕陽は既に谷間には届かなくなっていて、山々の頂きのみが点々と赤く染まってみえました。時刻は15時56分でした。 (続く)