アルコール依存症の自覚がないまま、泥酔中に離婚した40歳男性が語る「人生の債務」
11/9(土) 17:00配信
文春オンライン
いま、日本は3組に1組が離婚する時代。離婚経験のある男性にのみ、その経緯や顛末を、編集者でライターの稲田豊史さんが聞いた『 ぼくたちの離婚 』(角川新書)から、アルコール依存症が原因で壊れていったある40歳男性の夫婦関係と、その後の人生について紹介します。
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アルコール依存症の自覚がないまま、泥酔中に離婚した40歳男性が語る「人生の債務」
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「これで毎日会えるね」
若い頃の石田純一にどことなく似た風貌の竹田康彦さん(40歳)。離婚の理由は「酒」だ。
宮城県出身の竹田さんは、物心ついた時から新聞記者を目指していた。高校では新聞部の部長。進学した関東の某国立大学では、マスコミ研究サークルに所属した。
就職活動では当然新聞社を受けたが、採用は叶わず。PR会社か編集プロダクション(編プロ)の二択で悩んだ末、取材して記事を書く「記者」に近い仕事ができそうな編プロを選んだ。
仕事は激務を極めた。基本的に毎日終電で帰宅。土日を丸2日休めるのは皆無で、忙しい時期は月の半分近くが徹夜もしくは会社泊だった。その当時交際していたのが、後に妻となる2歳下の洋子さんである。
「マスコミ研究サークルの後輩で、僕が3年生の時に彼女は1年生。新入生としてサークルに入ってきた年から付き合いはじめました。明るくて、とても気立てのいい子です。卒業後は比較的大手のPR会社に就職しました。
洋子が就職後は会う時間が激減し、さびしいと思うようになりました。それで僕が26歳の時にプロポーズ。洋子はニッコリして、『これで毎日会えるね』と言ってくれました。あの時の笑顔は忘れられません。でも、僕は彼女を裏切ったんです」
会社では大量のフリスクを頬張る日々
結婚する少し前から、竹田さんの酒量が急激に増え始めた。仕事の内容が大きく変わり、記事を書く仕事ではなく、広告主との調整と進行管理がメインになったためだ。広告主の無理難題に耐えながら、綱渡りのスケジュールをなんとかこなす毎日。心の休まる時は1日たりともなかった。
「もともと酒は好きでしたが、ありえない量を飲むようになってしまいました。仕事から帰ってきても緊張と興奮で寝付けないので、毎日のように寝酒。4リットル1980円とかの安い醸造酒を、3、4日で空けちゃう。大量に飲酒すると眠りが浅くなるので、午前2時に寝ても朝6時か7時には目が覚める。それでまた飲んで、少しだけ眠って、シャワーを浴びて昼前に出社。そんな毎日でした」
クライアントに愛想よく振る舞う自分と、かつて新聞記者志望だった自分。そのギャップに折り合いがつけられないことも、竹田さんを深酒に向かわせた。日に日に酒量が増えていく竹田さんを洋子さんは心配していたが、止めることはできなかった。
「結婚して1年くらい経った頃は、目が覚めている時はずっと酔っ払っている状態。酒臭いのはまずいと思ったので、出勤前には念入りに歯を磨き、会社では大量のフリスクを頬張っていました。
アルコール依存症の自覚がないまま、泥酔中に離婚
ある時、自宅最寄りの駅前で酔いつぶれて寝転がっていたら、女性が声をかけてくれたんです。よく見たら、洋子でした。本当に優しい女性なんです。なのに僕ときたら、ささいなことで彼女と口論し、今から思えば信じられないほど酷い罵詈雑言を吐いて、よく彼女を涙ぐませていました。手を出したことはありませんが、暴力という意味では同じです」
離婚の決め手もちょっとした口論だ。泥酔した竹田さんが「じゃあ、もう離婚する?」と言うと、洋子さんは躊躇せず、「うん」と首を縦に振ったという。竹田さん31歳、洋子さん29歳。交際をはじめてから約10年で、ふたりの関係は終わった。
竹田さんは10年近く前の離婚を今でも悔いている。
「僕は東北の田舎育ち。周囲に離婚している家庭がひとつもなかったので、家族というものは永遠なんだと、心のどこかで思っていました。でも自分の手で家族を壊してしまったことで、家族ってこんな簡単に壊れるんだと思い知ったんです。ショックでした」
洋子さんの人生を台無しにしてしまった罪悪感と自己嫌悪で、竹田さんの心はいっそう荒んでいく。離婚後、3人の女性と付き合ったが、やはり酒癖が邪魔をして長続きしない。
新しい彼女とデートの時に「お酒飲んでるよね」
しかし、離婚から5年後、竹田さんが36歳の時に運命の人が現れる。飲み会で知り合ったデザイン事務所所属のデザイナー・佐智江さん(当時33歳)だ。
「音楽の趣味が合っていて、すぐ仲良くなりました。すると2回目のデートの時に言われたんです。お酒飲んでるよね、って。たしかにその日も朝から飲んでいました。僕は死ぬほど恥ずかしくてうろたえたんですが、すかさず彼女は言いました。『大丈夫、治せるよ。私も経験あるから』」
なんと、佐智江さんも仕事のストレスからアルコール依存症になり、禁酒外来で克服した過去があるというのだ。その後、竹田さんは佐智江さんの献身的なサポートにより、数ヶ月かけて禁酒に成功する。
「命の恩人です。彼女がいなかったら、今ごろ僕は廃人でした」
交際から1年半。竹田さん37歳、佐智江さん34歳でふたりは結婚する。最高のハッピーエンド……と思いきや、話はここで終わらない。
人生の債務が、僕にはまだ残っている
「一昨年の秋くらいから、佐智江がうつ病を発症したんです。もともとストレスを溜めやすい性質で、アルコール依存症だった時期にも心療内科に通院していたと、その時はじめて知りました」
佐智江さんは、出会った頃とは別人のように変わってしまったという。
「基本的に涙ぐんでいますし、ささいなことで僕にいちゃもんをつけます。『あなたと結婚したせいで私の人生が台無しだ』と言われた時には、洋子の20代を台無しにしたことを思い出して、つらくなりました。ただ、あまり反論せず、聞き役に徹するようにしています」
「毎日おつらいですね……」と声をかけると、竹田さんは言った。
「佐智江は僕を救ってくれました。だから今は僕が佐智江を救わないと、なんていうか……僕の人生がフェアじゃないものになってしまう。それに、こんなことを言うのは不謹慎だと思いますが、洋子を不幸にした分の債務も、僕にはまだ残ってるんです。
永遠だと思っていた家族ですら、いとも簡単に壊れる。つまり永遠なんてない。だから人は、心が一時的に壊れてしまっても、その状態が永遠には続かないと思うんです」
竹田さんは、自分で自分に言い聞かせるように熱弁をふるった。
「それに、壊れた状態で吐く言葉が“ほんとう”じゃないことは、アルコール依存症で壊れていた僕自身が一番よく知っています。今の佐智江は僕に罵詈雑言を浴びせてきますが、それは佐智江の“ほんとう”じゃない。泣き叫ぶ佐智江の薄皮一枚の奥に、“ほんとう”の彼女がいるんです。……すみません、気持ち悪いノロケですよね」
そんなことはないです、と言うしかなかった。
「アルコール依存症は一生完治することがないので、僕もいつまたダメ人間に戻ってしまうかわかりません。もし佐智江が回復しないまま僕が依存状態に逆戻りしたら、僕はそのまま体を壊して死んでしまうでしょう。その時は、洋子の『これで毎日会えるね』と佐智江の『大丈夫、治せるよ』を思い出しながら死にたいんですよ」
稲田 豊史
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誰しも陥るアルコール依存症の恐怖、高級タワマン暮らしのシニアも…
11/6(水) 6:01配信
ダイヤモンド・オンライン
誰しも陥るアルコール依存症の恐怖、高級タワマン暮らしのシニアも…
大丈夫だと思っていても、実はすでに「アルコール依存症」かもしれない Photo:PIXTA
国が推進する「健康日本21」によれば、“節度ある適度な飲酒量”の目安は、ビールなら中瓶1本、清酒なら1合。だが実際には「生中1杯」は「駆けつけ1杯」にすぎず、その後、焼酎、清酒、ウイスキーなどとグラスを重ねる人がほとんどではないだろうか。ついつい大酒を飲んでしまうあなたは、単なる酒好きなのか。それとも“アルコール依存症”なのか――。(フリーライター さとうあつこ)
● 高級タワマンで暮らすシニアも… 「わかっちゃいるけどやめられない」
飲んで帰ってくると下戸の妻はいつもご機嫌斜めです。「お酒をやめろ」とうるさいのですが、自分にとってお酒はささやかなご褒美のようなもの。いい大人なんだから放っておいてほしいというのが本音です。まあ、その気になれば断酒なんて、いつでもできますけど…。
◇
アルコール依存症といえば、「ちゃぶ台をひっくり返し、妻を殴っているろくでなし」「へべれけになり、着の身着のまま路上で意識を失っている人」などといったイメージがあるのではないだろうか。
それだけに、「ちょっと飲みすぎじゃない?」と周りに心配されても、「自分はアルコール依存症なんかじゃない、大丈夫」と、忠告を無視して飲み続けてしまう。心中ひそかに「二日酔いも増えたし、控えたほうがいいかな」と自覚していても、である。
だが、「わかっちゃいるけど、やめられない」時点で、すでにアルコール依存症の入り口に足を踏み入れている可能性は高い。依存症に詳しい東京都新宿区のアパリクリニック理事長の梅野充氏は次のように説明する。
「アルコールの問題で相談に来た方に、『患者会に入会しては』とお勧めすると、みなさん『あんなやつらと一緒にしないでくれ』と顔色を変えるんですよ。しかし、アルコール依存症は生活態度や社会階層と関係なく発症する病気。毎日ちゃんと通勤しているビジネスパーソン、高級タワマンで優雅に暮らすシニアの中にも、アルコール依存症に陥っている人はいます」
では、いったいどこからがアルコール依存症といえるのか?セルフチェックに役立つアルコール依存症のスクリーニングテスト「CAGE」で確かめてみよう。
・酒量を減らさなければいけないと感じたことがありますか?(Cut down)
・周囲の人に飲酒について批判されて困ったことがありますか?(Annoyed by criticism)
・飲酒についてよくないと感じたり、罪悪感をもったことがありますか?(Guilty feeling)
・朝酒や迎え酒を飲んだことがありますか?(Eye-opener)
以上、4つのうち2つに当てはまれば、発症している可能性があるという。
「要するに、アルコール依存症とは、“やめたい気持ち”と“飲みたい気持ち”が葛藤している状態。飲酒量よりも自分のコントロールが利かないことが問題なのです。極端な話、『もうすぐ健康診断があるから』と断酒できる人は、たとえ一升瓶を飲み干す酒豪でも依存症ではないということになる。逆に、ビールをグラス1杯しか飲まない人も、毎日飲まずにいられない場合は依存症を疑ったほうがいいでしょう」
● 納期に追われる人、 ブラックバイトをする人が危ない?
アルコール依存症の恐ろしさは、一度陥ると制御不能状態のまま症状が悪化しやすいことにある。まるで途中下車できない新幹線に乗車しているかのように、飲む量も増え、頻度も増えているのに元の状態に戻れない、という人が多い。
まず、酒がないと物足りなくなり、酒量が増えてくる。そのうち飲まないとイライラし、汗や悪寒に悩まされるように。お酒が原因の遅刻や、判断ミスが目立ち始めるのもこの頃からだ。病気が進めば迎え酒が増え、揚げ句の果てにうそをついてまで飲み始める。ついに幻覚や手の震え、肝臓疾患も起こるようになる――こうなればもう依存症後期だ。家庭生活も社会生活も崩壊しているのに連続飲酒が止まらない…という悲劇に至る。
誰しも陥る可能性があるアルコール依存症。梅野氏は「納期に追われる仕事をしている人に目立つ」と、自ら診療してきた印象を語る。タイトなスケジュールで根を詰めて働くビジネスパーソンほど、一区切りついたときに飲んだ1杯のおいしさ、解放感が忘れられない。だからことさら、お酒にハマりやすくなる。
「一仕事終えてほっとして、さてどうしようかなとなったとき、お酒は一番手っ取り早い発散法ですよね。当たり外れがあるマンガや映画と違い、確実に気分を上げてくれる。おまけに自宅で晩酌する場合は、その快楽が1缶たった数百円で手に入るわけですから。やがて、“パブロフの犬”のように条件反射が起こり、“一仕事終えたら飲む”が習慣化されていく…。いつしか “飲むために仕事する”というように順番が逆転、酒が欠くべからざるものになってしまうのです」
ブラックバイトなど、低待遇でキツイ仕事をしている人も要注意だ。
「つらい現実、不安な未来を忘れさせてくれるのがお酒。先述のとおり、アルコール依存症はどの社会階層でも起こりえるものの、やはり貧困とは密接な関係にあるといえます」
体質的に酒乱になりやすく、一気にアルコール依存症の最終章、“社会的信用の喪失”まで突っ走ってしまう人も見られる。酔うと突然性格が変わり、暴言、暴力に及んだりするが本人は記憶を失っている、などだ。
「飲酒にからむ刑事事件を起こした人など、酒乱の人にお酒を飲ませ、血中アルコール濃度を測定すると不思議なことが起こります。普通の人は徐々に濃度が高まっていくのに対し、酒乱の人はある段階から突然、急激に濃度が高まっていく。その分、大脳皮質にまひが生じやすく、道徳観念を見失ってしまうと推測できます」
なお酒乱体質には、アルコールを分解する酵素の遺伝子が関わっていることが、専門家の研究によって明らかになっている。
● 依存症の手前段階、 “プレアルコホリック”とは?
恐ろしいのは、無自覚にアルコールにハマったり、トラブルを起こしたりしてしまうことだろう。厚生労働省の調査によれば、アルコール依存症の治療を受けているのは5万人に満たない。だが患者数は、推計107万人に及ぶ。さらに、その水面下にはアルコール依存症の手前の段階、“プレアルコホリック”の人々もいるという。
プレアルコホリックは「何らかのアルコール関連の問題がある」「連続飲酒をしたことがない」「離脱症状を経験したことがない」の3つの条件を満たす場合に当てはまる。かなりの人が該当することになりそうだが、アルコール依存症の専門外来では治療プログラムも始まっているなど近年、注目される疾患である。
さてここまで読んで、いかがだっただろうか。自分はあくまで「健全派」なのか、「自らを抑制できる酒豪」なのか、「明らかにどっぷりアルコール依存症」なのか、それとも「プレアルコホリック」か――。
もしも「お酒の問題を抱えている」と感じるようなら、早めに手を打とう。治療の第一歩となるのは「自分の行動を変えよう」という気持ちだ、と梅野氏。
参考にしたい理論がアメリカの心理学者、プロチャスカとディクレメンテが提唱した「行動変容ステージモデル」※だ。ステージは5つ。問題があると思っていない「無関心期」、問題を感じ始めた「関心期」、情報を集め、問題解決の準備を始めた「準備期」、本格的に治療に取り組む「実行期」、達成した変化を維持する「維持期」。再発が起これば、前の段階に戻って再び行動変容に取り組む。
「5つのステージをぐるぐる回りながら、人は徐々に変容していきます。失敗してもまたチャレンジすればいい。まず、“自分は大丈夫”という否認の状態を抜け出しましょう。“このままじゃマズイ”と自覚し、自分を変えたいと思うことが大切。ダイエットと同じですよ」
最近はいきなり断酒するのではく、段階的に“減酒”にチャレンジする治療も行われるようになった。その詳細は次回(11月20日〈水〉更新予定)、お伝えしたい。
※『チェンジング・フォー・グッド』(法研),2005
さとうあつこ
l66***** | 3日前
ある人は、電車で通勤中、飲み干す度に駅におり、呑んではまた乗車するを繰り返したそうな。
また、別の人は家族が無理やり二階の部屋に閉じ込めても、窓から飛び降り、怪我を負ってでも酒を買いに行ったとか。
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ago***** | 3日前
タワマン関係ない。
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返信0
chi***** | 3日前
ひと口も飲めない下戸なのでならないですよ。下戸からしたら酒に逃避できるとか羨ましいですわ。
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ziy***** | 3日前
夏の風呂上がりは、冷えたコップに麦茶と氷を入れて飲めば、ビールの誘惑から逃げれるよ♪
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kag***** | 3日前
高級タワマン暮らしのシニアは、何か特別なの??アル中は貧乏人の病気との偏見を前提にした記事。
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もぐもぐ | 1日前
飲むために働いてる!と冗談で言ってる人は割といますよね?
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rfn***** | 3日前
お酒は楽しく飲むもの。逃避の手段で飲む人は気をつけて。美味しいお酒を作ってる人たちにも失礼だわ。
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kin***** | 3日前
私のアルコール依存は、お客様と接待で飲むことが週2回、社内の飲み会が月2回。大して好きでもない酒をそれに付き合わされ、体質的に強くなってしまったのが原因です。
やがてうさ晴らしのため一人酒を飲むようになり、酒がうまくなった。今ではほぼ毎日飲んでいます。そして翌日確実に酒は残り、仕事のパフォーマンスは明らかに下がっています。
宴会部長、あなたが来なきゃ盛り上がらないよとおだてられ、今日も明日もお客様との飲み会で言いたくもないお世辞を言わなくちゃならない。せめて一人酒を止めるしかないか。