〈なぜ今“値上げラッシュ”が起きているのか〉給料の上がらない日本への“処方箋”
1/19(水) 6:12配信
107
この記事についてツイート
この記事についてシェア
文春オンライン
新年早々から恐縮だが、今年は値上げの1年になるだろう。昨年から値上げのニュースが目に付くようになったが、その傾向がさらに進むと筆者は見ている。
【写真】原油高騰は一時的なものではない
昨年はガソリンや灯油の価格が大きく上昇し、電気やガスなどの公共料金は今年の2月まで6ヶ月連続で値上げされる。昨年初めと比較すると大手電力10社、大手都市ガス4社ともに15%近くも上昇していることになる。
それだけでない。パンやマーガリン、牛肉、コーヒー、食用油、冷凍食品、飲料、砂糖、マヨネーズといった調味料など、多くの食料品が値上げされ、今年も多くのメーカーが値上げを発表している。
値段を据えおきながら量を減らして、実質的に値上げする「ステルス値上げ」は以前から目についたが、もはや、それでは各企業ともしのげないのだろう。
「スタグフレーション」に陥るリスクがある
食料品の値上げが続く
昨秋、緊急事態宣言が全面的に解除され、消費マインドも回復基調にのったところに、一連の値上げラッシュが襲い、オミクロン株と共に景気に冷や水を浴びせた格好だ。
しかしながら値上げ(物価高=インフレ)は絶対悪ではなく、良いものと悪いものがある。
「良い物価高」とは景気拡大と同調するものだ。商品が値上げされると、それを販売する企業の売上高が増えて、社員の給料が上がり、消費活動が活発になる。このサイクルが社会全体で回り始めると、景気は良くなっていくのだ。
一方、「悪い物価高」とは、モノの値段は上がっているのに、給料が増えない状態のことだ。消費者は買い控えを余儀なくされ、その結果、各企業の売上が減少する悪循環が生じてしまう。
いまの値上げラッシュは言うまでもなく後者である。このままでは1970年代のオイルショックのように、不況なのに物価高が進む「スタグフレーション」に陥るリスクが高まっている。
値上げラッシュが起きている原因
なぜ、いま値上げラッシュが起きているのか。その状況から自分たちの生活を守る方法はあるのか。「悪い物価高」の傾向と、それへの対策を論じてみよう。
値上げラッシュの原因を探るために、まず押さえておくべきなのは、製造コスト、輸送コストなど多くの要素へ影響を与える原油価格だ。原油価格の代表的な指標は、ニューヨークの先物市場で取引されるWTIである。
2020年は1バレル(159リットル)おおよそ20~40ドル台で推移していたが、2021年10月下旬には85ドル超と、7年ぶりの高値をつけた。前年比で2~3倍になった計算である。
「脱炭素化」が価格上昇の原因だった
この価格高騰の原因は各国でワクチン接種が進み、世界経済が回復へ向かったからだ。
2020年の夏から、まず中国経済の拡大が進み、欧米経済も2021年春には底入れした。経済活動が活発になってヒト・モノの動きが増えると、おのずとエネルギー需要が増えて、原油価格は上昇していく。じつは日本のガソリン・灯油の価格も一昨年の前半から徐々に上がっていた。
国内市況を調査している「石油情報センター」によると、昨年12月半ばにはガソリンが1リットル165円台と、前年比で2割以上も上がり、灯油(店頭価格)も1リットル106.9円と前年比3割以上と大きく上がっていた。
昨年12月はオミクロン株の感染拡大が懸念されて経済活動のスピードがにぶり、世界的に原油価格は落ち着いた状況だったが、それでも前年より大幅にアップしている。
問題なのは、原油の価格上昇は一時的なものではないということだ。なぜなら高値基調の背景には、増産に慎重なOPECやロシアなどの産油国の思惑があるからだ。
世界的に脱炭素化が唱えられているいま、産油国は将来的に原油の需要が減少すると警戒している。だから増産には慎重になっているし、おそらく内心では原油高を歓迎しているだろう。
そうした産油国の態度に業を煮やしたアメリカのバイデン大統領は、昨年11月に5000万バレルの石油備蓄の放出を発表。アメリカの要請を受けた日本なども同調した。
その効果は推移を見ていくしかないが、脱炭素化という世界的な潮流が変わらないかぎり、産油国が供給量を積極的に増やすことは考えにくい。今後も高値基調は続くだろう。
「安いニッポン」として取り残される
日本の値上げラッシュを引き起こしているのはエネルギー価格の上昇だけではない。原材料費や物流費も上がっているところが、今回の物価上昇の大きな特徴だ。
昨春、輸入木材の価格高騰が「ウッドショック」と呼ばれて話題になった。その後、銅やアルミ、鉄鋼など金属素材の価格が高騰する「メタルショック」も発生している。これにより国内の建築・住宅関連の物価が大きく上がった。
こうした物価上昇は日本だけの現象ではない。欧米の主要国は好景気だし、多くの新興国で経済が大きく発展しているため、世界では日本以上に物価が上昇している。
スイスの大卒の初任給は日本円で年収900万円。日本(270万円)の約3倍だ。日本は韓国よりも1割近く初任給が低かった。ただしスイスは賃金も高いが物価も高く、ハンバーガーの価格が、日本の390円に対して、800円(6.5フラン)と倍以上もする。
消費者が購入するモノやサービスの価格を示す「消費者物価指数」をみると、昨年10月は日本が前年比0.1%の上昇と、ほとんど横ばいなのに対して、アメリカは前年同月比で6.8%、イギリスは5.1%と上昇している。ユーロ圏全体では4.9%と過去最高で、韓国は3.7%と10年ぶりの高さだ。
このところ「安いニッポン」という言葉が広まっているように、日本は取り残されているのだ。
こうした世界的な物価高のため、輸入品の価格の動きを示す「輸入物価指数」は、直近のデータとなる2021年11月で前年比44.3%アップという強烈なものだった。
私たちが購入する消費財(車、家具等の耐久消費財や、食料品、日用品等の短期の消費財がある)の約4分の1は輸入品なので、輸入物価の値上がりから逃げることはできない。
この世界的な物価高に加えて、円の購買力が低下する「円安」という要素もある。
アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は昨年12月、量的緩和策の縮小を前倒しすると発表し、今年中に3回の利上げを実施するという見通しを示した。
景気回復を優先するスタンスを転換したわけだが、アメリカ経済は腰が強く、少々の利上げでは景気が悪化しそうにない。世界中の投資家が景気の勢いが強く金利の高いアメリカに投資資金をシフトさせるので、相対的に円安が進むことになる。
日本は当面、海外からの値上げ圧力にさらされることになるだろう。
熊野 英生/文藝春秋 2022年2月号
tan***** | 1日前
非表示・報告
岸田さんが掲げていた所得倍増、財政出動、PB凍結は嘘と言うことがわかった。
所得倍増どころか、税金倍増の間違いだろ。
これで支持率上がったとか言ってるが、ただマスコミが扱いやすい意味での支持率だな。
返信6
409
33
tar***** | 1日前
非表示・報告
経済状況を少しずつでも良く回せるような政治家さんはいないのだろうか。
微々たる昇給は税金で引かれる分で相殺され、物の値段が上がったためにどんどんマイナスになっていく。
1度大きく方向転換、とういうか思い切った舵取りが必要になっていると思う。
返信6
229
14
nzi***** | 1日前
非表示・報告
マジで給料上げてくれ。
社会保険料も高すぎる。
フルタイムで税込み月16万くらいだが約3万も税金で持っていかれる。
20代前半であることを考えても安すぎる。
家庭保ちたいとか思うが、現実は無理。
給料今の倍くらいはないとそんな話は無理だな…
返信5
200
24
tig***** | 1日前
非表示・報告
企業が儲かっているが、個人は儲かっていない…
所得倍増どころか、減っている事が多いのにお金を積極的に使う人なんて稀だと思います。
給付金でなく、減税をしないと景気回復なんて有り得ないと思います。
返信8
138
13
ko7***** | 1日前
非表示・報告
日本の平均年収はこの30年でほとんど変わっていない、アメリカは30年で約1.5倍、韓国は2倍、OECEランキングで22位で韓国にも抜かれた。
この30年経済の成長率は約20%、成長していない訳ではないのに給料は増えない、どこに行ったか、答えは企業の内部留保、約400兆円、年間国家予算の4倍を企業が抱えている、アメリカなどは正当な分配のため内部留保に税金をかけている、日本も正当な分配のため内部留保に税金をかけるべきではないか?。
返信2
127
15
tor***** | 1日前
非表示・報告
厄介な風邪程度のコロナにコスト垂れ流すよりも、直近で国民の給料上げてもらいたい。長期的に産業への投資や教育や子育てにタネ撒いて少子高齢化による労働力減少を食い止めてもらいたいが。
岸田さんやれんのか?また支持層にいい顔して、スタグフレーション対策もなあなあに終わりそうで心配。問題を見て見ぬふりしてこんな日本にした政治家にはいい思いは持てない。
返信3
138
27
shi***** | 1日前
非表示・報告
私は、2年間で収入が増えている。災害関係の仕事をしていて、日本の国がある限り、仕事はなくならないので生きていける。そうでない人は、これまでの自公政治で、どんどん貧乏になってきて、これからもっと貧乏になって行くことを、いい加減に分からないといけない。少なくともこのままでは、今の生活を続けることは夢のまた夢。今生活に困窮している人はさらに生きていくのが難しくなる。自公から訣別するかどうかは別にして、自公を選挙で勝たせてはいけない。何の反省もせず、何も良くならない。野党はもっと頼りない?たしかにそう。ただ、まず今は、自公に危機感を持たせることが重要。もはやかなり手後れではあるが。
返信3
93
17
dyr***** | 1日前
非表示・報告
コロナ禍前にオランダに研修に行ったけどオランダでは普通の商店のパートのおばさん
の時給が2000円です。
随分高い時給ですねと言ったらオランダでは2000円が普通ですと言われた。
欧州では過去30年間穏やかなインフレが続いているのでそれにあわせて給料も
上がっているそうです。
先進国でデフレなのは日本だけだと思う。
日本はとにかく物やサービスを安く提供する事を追求しているけど最近の輸入資源
と輸入食料の高騰と人手不足による人件費の高騰で、そのやり方は限界になって
きている。
そもそも日本は
芋やキュウリの大きさを揃えて販売する為に莫大なコストをかけているので
そろそろ欧米の基準にあわせた商品の販売方法に切り替えた方がいいと思う。
欧州では大きさはバラバラだよ。
返信1
36
3
40代おっさん | 1日前
非表示・報告
人件費の高騰、国民の給与が底上げとなり、それによる値上げなら致し方ないと思いますが、そういう時代になる時があるのでしょうか。
返信3
50
6
bcn***** | 1日前
非表示・報告
政府も各企業に賃上げを要請してるみたいだけど、そんなことよりも各家庭に課せられる税金、NHK代、保険料を値下げしたほうが手っ取り早いと思うのだが…?住民税、所得税、年金、国民健康保険料、ガソリン税、自動車税、様々な固定費用を下げてくれれば所得税が上がらなくても同一の効果があると思うし企業による格差も少ない。
John Foxxxx | 1日前
非表示・報告
この文章を踏まえた上で、今回また一都数県にまん延防止措置を発令しようとする姿勢を勘案すると、現政権は景気の縮小を良しとしていると言う事になる。
物価の上昇に反比例する様に下がる国民の収入。
ヨーロピアンスタンダードに無理矢理合致させようとするSDGs。
そして、過去まん防に係わらず感染者が増減したと言うのにまた繰り返そうとする。
細かい事を書けばきりないけど、これだけでも充分お釣りがくるでしょ。
今後の景気動向を考えたら企業は今迄以上に内部留保を膨らませたがるだろうね。
株主にそっぽ向かれたく無いから。
原材料費や光熱費は上がり続けるから一層収入の増加要因が消えていく。
今年は所得格差が更に広がりのかもしれません。
日本は完全に一握りの富裕層と多くの低所得労働者の国に向かってるのですね。
返信0
26
3
ngn***** | 1日前
非表示・報告
今の物価上昇は
輸入品値上がりに企業が耐えきれず起きている。
生産者や下請け等も含めた適正利益の価格ではなく、デフレマインドが続き労働者の賃金アップには寄与しない。
具体的な事は未定だが
政府の考えは以下の感じだ。
過度に消費者の購買意欲を恐れ
適正価格の設定をせず
人件費抑制や材料費値下げ交渉(圧力)や
設備投資抑制や人材投資抑制
などがデフレ状況を作り出していた。
政府はそれらを一つずつ切り崩していくようだ。
人材流動化を支援(人的投資)し
低所得者や転職希望者を成長分野へ振り向ける。
価格Gメンによる企業の購入価格の監視強化、
デジタル化・(労働)生産性向上に資する
企業の設備投資を促す施策、
行き過ぎた株主重視を止め従業員や取引先や環境なども重視した企業の姿勢・風土に変える施策、
単年度主義を改め中長期的投資を促すなど。
早く具体的施策を見てみたい。期待している。
返信0
25
7
ent***** | 1日前
非表示・報告
>消費者が購入するモノやサービスの価格を示す「消費者物価指数」をみると、昨年10月は日本が前年比0.1%の上昇と、ほとんど横ばいなのに対して、アメリカは前年同月比で6.8%、イギリスは5.1%と上昇している。
つまり、日本の場合は「企業努力」でコスト値上げを吸収している可能性が高いのですね…。
そしてそれは人件費の削減という形で跳ね返ってくるため、いつまで経っても給料は上がりません。
返信0
27
7
ちぃず牛丼 | 23時間前
非表示・報告
処方箋は出せませんよ。
何故ならば出すのは余命宣告ですから。
小泉竹中で非正規を事実上無条件解禁をし、安倍で外国人労働者の大々的解禁をし自国民をワーキングプアに落とした上に重税に重税を重ねているのが今。
ボーナス平均額は減っているのに税収は過去最高という、庶民が死ぬ一歩前まで吸い上げているクセに分配は『条件付き』の10万こっきり。
これで消費せよというのが終わっている。
自民党が与党である限りデフレ…いやスタグフレーションは止められないし、少子化は最終局面を迎え日本は滅びます。
返信0
14
3
don***** | 1日前
非表示・報告
輸送コストが上がった、運んでる現場からすれば運賃はビタ一文上がってません!燃料代は上がり首都高も値上げ目前、なのに輸送コストがとか分けがわからない、結局は体の良い便乗値上げ。
返信0
36
9
hir***** | 1日前
非表示・報告
政府がどれだけ企業に賃上げ要請の働きかけをやっても、日本人の投資家が経営者に労働対価の引き上げ阻止の圧力を掛けている限りは日本人の賃金が上がる事は無いですよ。
彼らからすれば税金と賃金は払う必要の無い無駄なものという感覚だし、経営者と違って企業を運営して行く仲間だとすら考えていないですしね。
政府が働き掛けるのは企業ではなくて後ろでコントロールしている投資家だと思いますよ。
返信0
16
5
sun***** | 29分前
非表示・報告
スタグフレーションは原料高の人件費抑制だな
仕入れ原材料が値上がりしているのを
人件費を抑制して値上げ幅を抑制しようとする
経営判断だろうが
コレでは所得据え置きの物価高になっている
基本2月から3月にかけて各社10%の値上げを行うことが色々な方面から連絡来ている
コレは消費税20%になった様な市場に対する衝撃を与えるだろう
返信0
0
0
haz***** | 1日前
非表示・報告
特に第一の矢である金融緩和によって円という通貨の価値を切り下げたことで、日本の企業は息を吹き返したように語られています。しかし、実はこうした通貨切り下げ策が中長期的に一国の経済を成長させたことは一度としてありません。
円安になったり、株価が上がったりしたことで、日本人の生活や暮らしはよくなっているでしょうか。綿、銅、食品など日本が輸入に頼っている製品の価格が上昇したことで、庶民の生活費はむしろ上がったのではないでしょうか。建設コストや製造コストが上がったことで、苦しめられている企業が出てきていないでしょうか。
現実をよく見れば、1億人を超える日本人のほとんどが幸せにならずに、一部のトレーダーや大企業だけが潤っている。それが果たしてよい政策といえるでしょうか。安倍首相の答えは「イエス」でも、多くの日本人にとっては「ノー」でしょう。
ジム・ロジャーズ氏の言った通りになる悲惨な日本・・・
返信0
13
6
ノッポ | 21時間前
非表示・報告
>「輸入物価指数」は、直近のデータとなる2021年11月で前年比44.3%アップという強烈なものだった。
これだけ上がってても、売値は10%~20%程度の値上げ。
売値には企業の利益他、仕入れ値以外のものもあるから、
そのままの率で上がるわけじゃないけども、実際価格転嫁しきれていないだろう。
さらに値上げによって販売数は減るだろう。
そうすると企業は利益が減る。
従業員の給料は上がらないのに物価は上がる。
最悪の状況。
返信0
1
0
yhy***** | 23時間前
非表示・報告
消費浮揚を目的にするなら 税や保険料を下げる。
これが最善の処方箋。
いくら賃金を上げても 可処分所得が大きく変わらなければ消費は増えない。
欧州先進国のように 高齢者への社会保障が十分では無い日本では 可処分所得から預貯金に回ってしまう。
消費税収率は 消費税率が高い欧州先進国よりも日本の方が上回っているのに 社会保障が欧州よりも少ない。
日本は税の再分配が歪んでいるから。