史実無視で好きなように作っているはずなのに何故か物語のスジや登場人物の言動が支離滅裂な大河ドラマ『龍馬伝』。
放送時にはあまりの混乱ぶりに呆れて観るのをやめたが、思い直してDVDで視聴を再開。それでもまた挫折しそうだったが、遂に何とか最終回までたどり着いた。
最終回第48回「龍の魂」。
俗に言う「ツッコミどころ」があまりに多すぎて面倒くさいので番組内容について詳述することはせず、重点のみを書く。番組内容との関連に関心がある方はDVDとかで確認して頂きたい。
史実では薩長などの関係者の間を奔走し大政奉還を実現したのは後藤象二郎である。龍馬ではない。大久保一翁や松平春嶽らからの受売りの大政奉還策を後藤に教えたらしいこと(この話も根拠が有るわけではない)以外は、龍馬は大政奉還実現に関して全く何もしていない。徳川慶喜が大政奉還を決意したことが周囲にも明らかになった“後”に、何を思ったか、後藤象二郎に“励ましのお便り”を書いただけである。
大政奉還し徳川幕府が無くなっても、武士階級が日本を実質的に支配している事実に即座に変化が起き世の中が変わるわけではない。大政奉還イコール身分制度・封建体制の崩壊というNHK龍馬の認識は妄想と言うしかない。もともとNHK龍馬はイカれた二重人格だったからしょうがないが。
『新政府綱領八策』というのは後世に生まれた呼び方で、龍馬が書いた文書の題名はただの『八義』である。この『八義』よりも前に書かれたとされる『船中八策』の方が内容が充実していることが、『船中八策』が明治に入ってからの捏造であることの根拠の一つである。
○○○は「みんな」なのだそうだ。アホくさ。徳川慶喜を指す「大樹公」と考えるのが一番自然。
新政府の人事案である『新官制擬定書』は当時龍馬の近辺に居た戸田雅楽(とだ うた。後の尾崎三良)が作成したもので、龍馬が書いたものではない。戸田は三条実美の家臣であり朝廷の組織や官職についての知識があったから其れを作成することが出来た。『新官制擬定書』を西郷隆盛に見せたのも戸田である。戸田が作成した『新官制擬定書』には「参議 坂本」と書かれている。龍馬は新政府に参加するつもりでいたのだろう。
”龍馬が書いた『新官制擬定書』に龍馬自身の名が無いことを不思議に思った西郷隆盛がそのことを訊ねると、龍馬は「ワシは役人はイヤだ。世界の海援隊をやりたい」と答えた”という「世界の海援隊伝説」はただの作り話である。
龍馬を自由民権運動の先駆けと無理やり位置付けた土陽新聞記者坂崎紫蘭(さかざき しらん)という人物(『龍馬伝』で、岩崎弥太郎のところに“坂本龍馬について教えてくれ”と押しかけてきていたアノ人)が「維新土佐勤王史」を執筆した際に、龍馬の名が後の政府高官らと一緒に出てくるのはマズイと判断し原資料を勝手に改竄したのが間違いの元だ。それに「世界の海援隊云々」という話が付加された。
龍馬殺害に関して様々な伏線を張りまくっておきながら、結局は史実通りに、龍馬を殺したのは佐々木只三郎(ささき たださぶろう)や今井信郎(いまい のぶお)ら「京都見廻組(きょうとみまわりぐみ)」ということにしてしまった。支離滅裂・行き当たりばったりと言うしかないこの番組の姿勢は最後まで変わらなかった。
やっと、遂に最終回まで辿りついた。正直、疲れた。本当に。
さよなら、『龍馬伝』。たぶん二度と観ることはない。