日本近代史を専門とする歴史学者の間では龍馬殺害事件に関して謎はあまり残されていない。
未だに「幕末最大のミステリー」などと言って見当違いの「土佐黒幕説」だの「薩摩黒幕説」だのを唱えているのは、研究者を自称する素人かフィクションを稼業にしている小説家やテレビ屋さんか、「真の黒幕」を庇(かば)いたい人間だけだ。
実行は京都見廻組(きょうとみまわりぐみ)だ。これは既に定説である。
現代の公安警察に相当する京都見廻組に命令したのは彼らの上司である京都守護職を勤めていた会津藩主松平容保(まつだいら かたもり)か、正式な指揮系統からは外れるが、その実弟であり京都所司代の任にあった桑名藩主松平定敬(まつだいら さだあき)と考えられている。これも定説になりつつある。
私が愛する仲間由紀恵ちゃんが出演する映画『武士の家計簿』の原作を著した茨城大学准教授磯田道史(いそだ みちふみ)氏が、そのあたりも含めて判りやすい本を書いてくださった。『龍馬史』(文藝春秋社刊)だ。
未だに後藤象二郎が怪しいとか西郷が怪しいとか本気で思っている時代遅れの不勉強な方々は買って読んだほうがいい。