楽学天真のWrap Up


一語一句・一期一会
知的遺産のピラミッド作り

こころと科学と自然そのもの

2006-04-20 16:46:28 | 科学
竹内薫「99.9%は仮説」光文社新書。
私は、毎日の通勤の途中、駅近くの本屋により、読む暇がなくとも目についた本は買っておくのが習慣。
最近刊行されたこの本もその中の1つ。
著者は分かりやすい科学の解説をしてくれることで定評のある日本では希少な高度な「科学評論家」。

午前中、電車、プラス嵐を口実にちょっと寄り道、喫茶店。
2時間ほどで一気読み。

科学の本質と哲学と人間のこころを結び、軽快なタッチで良く書けている。
20世紀、科学哲学論は正確である。ポパーの前のクーンの評価が欲しかったが。
帰納過程に対してやや過小評価気味。自然と接する混沌とした直感の世界がある。
科学はトップダウン(演繹)とボトムアップ(帰納)の歯車が面白いのだがね。
それも、微妙に噛み合ないところが、とくに。
宗教観もいい。そして人間観も同意。
著者は物理出身なので、トップダウンサイエンスでも、ま、いいかね。

私は日頃、日本の科学には哲学が不足しており、ちまたに出ている科学を解説するものがなぜ翻訳本ばかりなのかと思っている。それも、How toものの陰で本屋の片隅に追いやられている。そのような中で、竹内氏にはどんどん活躍して欲しい。
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人の死と時間

2006-04-20 08:13:08 | 生活
今日は私の亡き父の誕生日。
父は私が36の時、72歳で他界した。
急性白血病。発覚時あと3ヶ月と宣告。ちょうど3ヶ月目に息を引き取った。
私は遠くはなれた地にいたので、宣告から他界するまでたった一度しか会う事が出来なかった。
本人には告知されていなかったので、駆けつけた私の帰郷に父は病床で大喜び。
「どうした?急に来て。こっちで仕事か?ちょっと風邪をこじらせてね。今度の夏休みは孫を絶対連れてこい!」
といって、笑顔で送ってくれた。健康な父であり、それまで風邪すら引かない父であった。
私はこみ上げる涙をぐっとこらえ、笑顔で答えるしかなかった。
「お、わかった。んじゃ、また」
そして3ヶ月。危篤の知らせで駆けつけた時、もはや意識はなかった。
生命維持装置を静かにはずした。
それまで苦しそうであった父の顔は、みるみる穏やかとなり、そして静かに眠りについた。
雪国の凍てつく真冬の最中であった。

父の年齢が私の倍であったので、私は自分の人生が折り返し点であることを強烈に自覚させられた。
父は、家族にとってはちょっと我がままなほどの、世話好きの破天荒な田舎の教育者であった。

そして、父の死、そのものが強烈な最後の教育であった。
もはや、無心に褒めてくれる鏡はなく、自分で自分をしかり、ほめるしかない。
その時から、私は時間というものが極めて貴重なものであると悟った。
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