楽学天真のWrap Up


一語一句・一期一会
知的遺産のピラミッド作り

驚くべき小説ー永遠のゼロ

2007-02-12 15:30:53 | 読書
永遠の0 (ゼロ)

太田出版

このアイテムの詳細を見る

連休だというので、本屋で通りすがりに手にした一冊。
帯に記された「児玉清のひとこと」で手にしたが、やはりこれはすごい!
本当に涙を流しながら読んでしまった。
この小説の追跡者は、私らの子供たちの世代。追跡されるものは私たちの父の世代。私はその狭間の世代。
その狭間世代故に今まで分からなかったものが、目から鱗がはがれるように落ちていく。

第2次大戦の特攻の青春と、戦後のその子たちの青春、そして今の青春をつなぐ壮絶な小説である。

私の叔父は陸軍士官学校出の軍人であった。私の妻の父はまさにこの小説の舞台、九州の特攻基地の通信兵であった。
彼らは飲むと当時の青春を振り返り、軍歌を歌っていた。
私の父は、教員であった。恐らく軍国教育をし、かつ戦後教科書に墨をぬった類いであろう。
彼は周りが飲む時でも、戦争賛美には一切組していなかったかに見えた。
一度だけ、訓練中に銃の木の柄に傷をつけてしまい、死ぬほど殴られ、必死になってそれを修復したことを酔って話しているのを聞いた。
軍隊とはなんと恐ろしいところだという恐怖が私には植え付けられた。彼らは当時の多くを私ら子供に語ることはなかった。
私らも彼らが戦争で人を殺したのかどうかは、恐ろしくて聞くことは出来なかったし、彼らも語ることは決してなかった。

彼らの多くは、既に世を去った。私の父も妻の父もすでにない。
でも、この小説は、彼らの子供たちには語ることの出来なかったことでも、時間を経て孫には語ることができるようになったこと、死ぬ前に語らなければならないことを小説として訴えている。

安っぽい戦争賛美や戦争反対ではなく、戦争とは壮大な悲劇であることが圧倒的な迫力で迫ってくる。
そしてその中で守ろうとした「愛」(それすら安っぽく響く)をこんなにも見事に描き出した小説はかつてあったであろうか?

読んだ後に、本当に生きる力がわき上がってくる作品である。
私にはこの小説を斜に構えて評論する気にはなれない。


コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする