西野了ブログ テキトーでいいんじゃない?

日々浮かんでくる言葉をエッセイにして・・・・・・。小説は「小説を読もう 西野了」で掲載中です。

「暴力は親に向かう 二神能基著」の衝撃 その2 

2008-02-02 09:14:46 | Weblog
 家庭内暴力の原因のもうひとつは「勝ち組教育」だ。
 「いい大学に入り、いい会社に入社し、出世街道を進む」ことが唯一の道として示される。学校でも家庭でも地域でもメディアにおいても、努力し勝ち続けることが人生において最も大切なことだと耳うるさく叫ばれる。終身雇用制は崩壊し、どんな一流企業でもリストラ合理化が行われる現在においてでも、である。
 この「勝ち組」になる道しか選択肢がないように、我々は知らず知らずのうちに刷り込まれている。たとえばあなたの子供が高校受験の際、もうひとつ上のランクの高校へ受験されたらどうですかと教師に言われたとしよう。このことに対し喜ばない親が日本全国にはたしてどれくらいいるのだろうか?と二神氏は問う。ほとんどすべての親が喜ぶのではないかと、それくらい無意識のうちに「勝ち組」路線は我々の中に浸透している。
 しかし人は永遠に勝ち続けることはできない。ほんの一握りの人間しかその栄誉を手にすることはできない。誰もがイチローやゴジラ松井にはなれない。
 けれども幼い頃から「勝ち組」路線一筋でやってきた人間は、いったんレールから外れると、なかなか他に道を見つけ出すことができない。家庭内暴力を振るう子供は、「勝ち組」路線の途中までは順調に行っていた人が多い。昔の栄光と現状との落差に愕然とし、先が見えない閉塞した状況から激しい暴力が噴出する。その暴力は自分に「勝ち組」路線を巧妙に進ませた親そして家族に向かう。(もちろん親は子供のために良かれと思ってそうしてきたわけだが)ある男性は東大に入学することしか人生の意義が見いだせなくて、精神病院に入院している現在でも毎日数学の問題集を解いている・・・それほどまでに「勝ち組」になる=東大に入学ということが完全に刷り込まれている。
 NPO法人ニュースタートは、ひきこもり解決のために、(もちろん家庭内暴力の解決も含めてだが)専任スタッフを派遣し、ひきこっている人たちにさまざまな場を提供している。 それは労働の場であったり、同じような人たちと文化的なイベントを作ることであったりする。それらは、これまで刷り込まれていた「勝ち組」路線とは違った生き方を提示するものだ。(詳しくはこの本を読んでいただきたい)
 僕がこの本で一番強く感じたのは、これまで全く知らなかった「家庭内暴力」の凄まじさであり、「勝ち組」「負け組」を言う安易な風潮で、まさに弱肉強食の冷酷な世界を造り上げてしまったこの社会に対する危機感である。僕たちが気付かない至る所で「勝ち組にならないと人生終わりですよ」と囁かれている。それに対し「NO!」と言うことは容易いことではない。しかし、小さな声でも、はっきりと「NO!」言わなければ、それとは違う道を指し示さなければ、この世界を救うことはできないのだ。
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