太平洋戦争集結から5ヶ月しか経たない昭和21年1月14日。
佐渡島の小さな村に、悪天候に見舞われたイギリス空軍の飛行機が不時着した。
イギリス人など見たことも無い村民たちは、墜落した「ダコタ」を遠巻きにして様子をうかがう一方、村長をはじめとする村役場の役人や小学校の校長、消防団の団長といった、村の主だった人々は困惑する。
GHQによって統治されていた日本にあって、イギリスは連合国のひとつであり、その空軍ともなれば占領軍の一翼を担う存在。
拙い対応をすれば、どんな制裁を受けるか分からない。
しかし村長(柄本明)の「これは人助けだ」という一言をきっかけに、「困った人を助けるのが佐渡モンら(佐渡の人間だ)」という意見のもと、イギリス兵を助けて再び「ダコタ」を大空へと送り出すために立ちあがる…
村長の自宅は、村唯一の旅館。 まずは機体の中で寝起きしていたイギリス兵たちに、仮住まいとして旅館を提供することにした。
村民の中には身内が戦死した者もあり、つい最近まで「鬼畜米英」などと敵視していた相手に対してわだかまりを持つ者もいたが、日が経つにつれて協力の輪は広がっていく。
村長の娘・千代子(比嘉愛未)も協力者の先頭に立つように、かいがいしく旅館に滞在するイギリス兵たちの面倒をみていた。
そんな千代子には気がかりなことが一つあった。
それは、訓練中の負傷で戦地に赴くことなく帰郷してきた幼なじみの健一(窪田正孝)のことだ。
村人たちがイギリス兵たちと交流を深め、互いに理解し合うようになってきても、健一はイギリス兵を敵視するかのように…
物語の舞台は佐渡島に限られているものの、油谷監督は「日本全体、日本人が昔から持っているもの」への思いを込めたという。
イギリス兵への対応に苦慮する村人たちに対して、村長が「人助けだ」というセリフに、監督の日本に対する眼差し、日本人に対する思いが集約されている。
更に、佐渡島の歴史を背景とした印象深いセリフがある。
「佐渡は、天子様から罪人まで、いろんな人が流されてきて、みんな受け入れてきた。それが佐渡の人間だ。」
かつて流刑地とされてきた佐渡島には、政争に敗れた天皇や貴族、僧侶から、重罪を犯した罪人まで、さまざまな立場や境遇の人々が流されてきた。
その全ての人々を受け入れてきたのが佐渡島であり、自分達であるということを誇る言葉に、グローバリゼーションによる人材流動が活発化する今の時代において、全ての日本人が考えていかなければならないことが込められている。
また、イギリス人と交流が深まるにつれ、その人柄に惹かれていく村人たちと村長の会話も示唆に富む。
「イギリス人が鬼だなんて、誰が言うとんのやろ?」
「陛下もおらち(自分達)も、悪い軍人に騙されとったっちゃ。」
そう村人たちが言うのを受けて、村長が諭す。
「戦争をはじめたのは、おらちだ。誰かに騙されたと思うとったままじゃ、次の戦争も止められん。」
日本の政治のあり方、日本人の政治に対する姿勢に対する痛烈な皮肉だ。
厳しい自然の中を生きてきた佐渡の人々だからこその温かさが胸を打つ。
心に響くセリフが、温かい「佐渡弁」で語られ、随所にちりばめられている、ハートウォーミング・ムービーの佳作。
「飛べ!ダコタ」
2013年/日本 監督:油谷誠至
出演:比嘉愛未、窪田正孝、柄本明、ベンガル、綾田俊樹、洞口依子、中村久美、芳本美代子、螢雪次朗、園ゆきよ、佐渡稔、マーク・チネリー、ディーン・ニューコム