地中海を中心に、ヨーロッパ全域に渡る広大な版図を誇っていたローマ帝国。
古代ローマでは「テルマエ」と呼ばれ、民衆の憩いの場となっていた公衆浴場の設計技師として、高い評価を受けていたルシウス(阿部寛)は、近頃のテルマエの在り方に疑問を抱いていた。
本来、ゆったりと湯船に身を沈め、静かに疲れを癒す場所であるはずのテルマエが、派手なデザインと奇を衒った斬新なアイデアがもてはやされ、彼の信念とはかけ離れたトレンドになっていたからである。
その日も、自信を持って提案したテルマエのデザインを一蹴されたルシウスは、親友のマルクス(勝矢)の励ましにも上の空だったが、気を使ったマルクスに流行りのテルマエへと連れて行かれた。
広大な浴場内は混雑しているだけでなく、中には格闘に興じる者もいて騒がしく、物売りまでもがウロウロしていて、テルマエ本来の機能を為していない。
湯船に浸かったルシウスは、ひとり気を沈めて「斬新なアイデア」を考えようとするが、周囲がうるさくて集中できない。
静けさを求めるには湯の中に潜るしかないのか…
彼は嘆きながら身を沈めると、ふいに激しい渦の中へと引き込まれてしまった。
溺れそうになって激しくもがくルシウスは、からくも湯の中から脱出できた!
荒々しい呼吸とともに、すっくと湯船の真ん中で立ち上がった彼が我に返って周りを見渡すと、そこには年老いた男達が茫然と自分を見つめていた。
「なんだ?この平たい顔は!?」
様々な属州を持つローマ帝国。
テルマエの排水口から、どうやら“平たい顔族”の浴場へと迷い込んでしまったようだ。
奴隷と一緒の浴場になどいられるか!と思ったルシウスだったが、見たことの無い設備や斬新な工夫に、風呂に対する文化の高さを感じて愕然となる。
それもそのはず。
彼が迷い込んだのは、現代の日本の銭湯だったのだ!
脱衣場でおごってもらったフルーツ牛乳の美味さに感動したルシウスが、思わず涙を流しているうちに、不意に古代ローマへと戻ることができた。
そして“平たい顔族”の浴場で見たものを元に、これまで誰も見たことの無い斬新なテルマエを作りあげると、ローマ市民から絶賛を受ける。
こうして特殊な能力を身に付けたルシウスは、タイムスリップを繰り返して、素晴らしい浴場のアイデアを次々に生み出し、遂には皇帝(市村正親)からも、厚い信任を受けるまでになる…
マンガ大賞2010と手塚治虫文化賞短編賞を受賞した、ヤマザキマリの大ベストセラーコミックを実写映画化。
古代ローマにおいて、人々の憩いの場となっていたテルマエと、日本の銭湯文化とを、主人公のタイムスリップを通して結びつけ、それが古代ローマ帝国の繁栄に寄与していく…という奇想天外な物語。
主演の阿部寛の他、市村正親、宍戸開、北村一輝といった“濃い顔”の役者を集めて古代ローマ人に仕立て上げたバカバカしさが愉快。
ルシウスがタイムスリップするシーンで流れる荘厳なオペラの調べは、何と世界三大テノールのひとり、プラシド・ドミンゴの歌唱。
その歌声を細かいボケに使うという贅沢さもまた、本作のバカバカしさの一翼を担っている。
ケッコウな予算をつぎ込んで、バカバカしくてくだらないことをやることは、物語の持つ世界観と見事にマッチしているが、さすが「のだめカンタービレ最終楽章」シリーズを手掛けた武内監督。
更にタイムスリップのシーンにおいて、歌だけなく映像でも思い切り遊んでいる。
最初は素っ裸のルシウスが真っ暗な中を流れていく映像で、時空を移動している様子を描いているが、中盤以降になるとグルグル渦を巻いている水の中を人形が(それも明らかに人形が水に流れていることが分かるように撮られている!)流されている映像に変わっていく。
高校の映画研究会で映画監督志望の学生による特撮のようで、2回目にその映像を見たときには、思わず声を出して笑わされてしまった(声を出しての失笑なんざ初めてかもしれない)。
古代ローマ人をマジメに演じるバカバカしさと、ご都合主義丸出しのタイムスリップをベースに、細かいボケと“ヘタウマ漫画的”なヘタクソ映像によるギャグを織り込んだフザケた映画ながら、「マジメか!」とツッコミたくなる主人公と、原作には無い上戸彩演じるホンワカとしたキャラクターが奏でるペーソスが、物語に甘く切なくもピリッとしたアクセントを付けているのも妙味。
大阪人ならツッコまずにはいられない“天然ボケ”ムービー。
バカバカしさ全開のストーリーを、正に温泉でのんびりとくつろぐように観るのが楽しい癒し系コメディ大作。
「テルマエ・ロマエ」
2012年/日本 監督:武内英樹
出演:阿部寛、上戸彩、北村一輝、竹内力、宍戸開、笹野高史、市村正親
古代ローマでは「テルマエ」と呼ばれ、民衆の憩いの場となっていた公衆浴場の設計技師として、高い評価を受けていたルシウス(阿部寛)は、近頃のテルマエの在り方に疑問を抱いていた。
本来、ゆったりと湯船に身を沈め、静かに疲れを癒す場所であるはずのテルマエが、派手なデザインと奇を衒った斬新なアイデアがもてはやされ、彼の信念とはかけ離れたトレンドになっていたからである。
その日も、自信を持って提案したテルマエのデザインを一蹴されたルシウスは、親友のマルクス(勝矢)の励ましにも上の空だったが、気を使ったマルクスに流行りのテルマエへと連れて行かれた。
広大な浴場内は混雑しているだけでなく、中には格闘に興じる者もいて騒がしく、物売りまでもがウロウロしていて、テルマエ本来の機能を為していない。
湯船に浸かったルシウスは、ひとり気を沈めて「斬新なアイデア」を考えようとするが、周囲がうるさくて集中できない。
静けさを求めるには湯の中に潜るしかないのか…
彼は嘆きながら身を沈めると、ふいに激しい渦の中へと引き込まれてしまった。
溺れそうになって激しくもがくルシウスは、からくも湯の中から脱出できた!
荒々しい呼吸とともに、すっくと湯船の真ん中で立ち上がった彼が我に返って周りを見渡すと、そこには年老いた男達が茫然と自分を見つめていた。
「なんだ?この平たい顔は!?」
様々な属州を持つローマ帝国。
テルマエの排水口から、どうやら“平たい顔族”の浴場へと迷い込んでしまったようだ。
奴隷と一緒の浴場になどいられるか!と思ったルシウスだったが、見たことの無い設備や斬新な工夫に、風呂に対する文化の高さを感じて愕然となる。
それもそのはず。
彼が迷い込んだのは、現代の日本の銭湯だったのだ!
脱衣場でおごってもらったフルーツ牛乳の美味さに感動したルシウスが、思わず涙を流しているうちに、不意に古代ローマへと戻ることができた。
そして“平たい顔族”の浴場で見たものを元に、これまで誰も見たことの無い斬新なテルマエを作りあげると、ローマ市民から絶賛を受ける。
こうして特殊な能力を身に付けたルシウスは、タイムスリップを繰り返して、素晴らしい浴場のアイデアを次々に生み出し、遂には皇帝(市村正親)からも、厚い信任を受けるまでになる…
マンガ大賞2010と手塚治虫文化賞短編賞を受賞した、ヤマザキマリの大ベストセラーコミックを実写映画化。
古代ローマにおいて、人々の憩いの場となっていたテルマエと、日本の銭湯文化とを、主人公のタイムスリップを通して結びつけ、それが古代ローマ帝国の繁栄に寄与していく…という奇想天外な物語。
主演の阿部寛の他、市村正親、宍戸開、北村一輝といった“濃い顔”の役者を集めて古代ローマ人に仕立て上げたバカバカしさが愉快。
ルシウスがタイムスリップするシーンで流れる荘厳なオペラの調べは、何と世界三大テノールのひとり、プラシド・ドミンゴの歌唱。
その歌声を細かいボケに使うという贅沢さもまた、本作のバカバカしさの一翼を担っている。
ケッコウな予算をつぎ込んで、バカバカしくてくだらないことをやることは、物語の持つ世界観と見事にマッチしているが、さすが「のだめカンタービレ最終楽章」シリーズを手掛けた武内監督。
更にタイムスリップのシーンにおいて、歌だけなく映像でも思い切り遊んでいる。
最初は素っ裸のルシウスが真っ暗な中を流れていく映像で、時空を移動している様子を描いているが、中盤以降になるとグルグル渦を巻いている水の中を人形が(それも明らかに人形が水に流れていることが分かるように撮られている!)流されている映像に変わっていく。
高校の映画研究会で映画監督志望の学生による特撮のようで、2回目にその映像を見たときには、思わず声を出して笑わされてしまった(声を出しての失笑なんざ初めてかもしれない)。
古代ローマ人をマジメに演じるバカバカしさと、ご都合主義丸出しのタイムスリップをベースに、細かいボケと“ヘタウマ漫画的”なヘタクソ映像によるギャグを織り込んだフザケた映画ながら、「マジメか!」とツッコミたくなる主人公と、原作には無い上戸彩演じるホンワカとしたキャラクターが奏でるペーソスが、物語に甘く切なくもピリッとしたアクセントを付けているのも妙味。
大阪人ならツッコまずにはいられない“天然ボケ”ムービー。
バカバカしさ全開のストーリーを、正に温泉でのんびりとくつろぐように観るのが楽しい癒し系コメディ大作。
「テルマエ・ロマエ」
2012年/日本 監督:武内英樹
出演:阿部寛、上戸彩、北村一輝、竹内力、宍戸開、笹野高史、市村正親
昨年(2011年)9月の台風被害復旧が捗らず余儀なく休館をいただきながら、再開に備えを進めてまいりました。おかげさまで、大勢の皆さまからの応援とご協力によりこのゴールデンウィークに再開でき連休期間は満室でした。年末年始・河津桜祭りを跨いで随分長いことお待たせしてしまったことをお詫び申し上げますとともに、リピーター様を中心に多くの皆さまにまたおもてなしをさせていただけるようになりましたこと本当に感謝でございます。
今後もこれまで以上に個性に磨きをかけて、一人でも多くの皆さまの健康と幸福のお役に立ちたいと存じます。
これからも『テルマエ・ロマエ』『ノルウェイの森』ともども伊豆の大滝温泉天城荘、湯の国ニッポン、何卒宜しくお願いします。
皆様の益々のご健勝をお祈り申し上げます。
「“湯の国ニッポン♪” ともに頑張ろう日本!」