面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ドラキュラZERO」

2014年10月25日 | 映画
トランシルヴァニア地方を治めるヴラド・ドラキュラ(ルーク・エヴァンス)は、民衆から大いに慕われ、臣下には大いなる尊厳と忠誠を受ける名君。
美しい妻のミレナ(サラ・ガドン)と一人息子と共に幸せに暮らしていたが、ある日ヨーロッパ侵略を狙う大国・オスマン帝国から、過酷な要求を突きつけられる。
それは、息子を人質とし、トランシルヴァニアの少年1000人を差し出せというもの。
息子も含めて差し出された少年たちはオスマン帝国の軍隊に入れられ、殺人兵器として育てられるのだが、ヴラド自身が少年の頃に人質としてかの国に引き渡され、兵士として戦いの日々を過ごした経験があった。
息子や少年たちに辛い思いをさせたくはなかったが、従わねば小国である自国は、ひとたまりもなく攻め滅ぼされる。
ヴラドは、国をを守るため、要求に応じようとする。
しかし、人質となることを恐れず気丈に振る舞う息子への愛情に突き動かされ、あろうことかオスマン帝国からの使者を切り捨ててしまうのだった。

反旗を翻したヴラドをオスマン帝国が許すはずがなく、瞬く間に大軍が押し寄せるのは必定。
国を、民衆を、愛する家族を守るため、彼はある決断をした。
それは古来より山深く隠れ棲む、人間の生き血を吸って生きてきたヴァンパイアと契約を結び、強大な闇の力を手に入れること。

かくして、凄まじいパワーを身に着けたヴラドは、たった一人で数千人のオスマン帝国軍をなぎ倒し、その兵士たちを串刺しにして林立させるのだが、払わなければならない代償もまた、過酷なものだった…


「吸血鬼ドラキュラ」のモデルとなった実在の人物であるヴラド・ドラキュラ。
ワラキア公国の君主として、敵兵を串刺しにして見せしめにしたことから「串刺し公」の異名を持ち、敵国から恐れられたという彼の伝説をもとに、いかにして稀代のモンスターが誕生することとなったかを描く。
恐るべきモンスターに身を変えてでも、民衆と家族を守ろうとするヴラドの深い愛情。
そしてそんな夫を理解して支え、懸命に息子を守ろうとする妻ミレナの献身的な愛情。
身の毛もよだつ怪物を生み出したのは、そのキャラクターのイメージからは程遠い「愛」だった。

中でも、息子を守り抜こうとするミレナの母性愛は、国と家族に対するヴラドの愛情をはるかに凌駕するほど激烈。
一見儚げなサラ・ガドンの風貌が、かえって母親の強靭な「愛」を引き立たせて恐ろしい…


「愛」に満ちたアクション・ダークファンタジー大作!


ドラキュラZERO
2014年/アメリカ  監督:ゲイリー・ショア
出演:ルーク・エヴァンス、サラ・ガドン、ドミニク・クーパー、チャールズ・ダンス、ザック・マッゴーワン、チャーリー・コックス、ポール・ケイ、アート・パーキンソン、ロナン・ヴィバート

「リヴァイアサン」

2014年10月11日 | 映画
マサチューセッツ州ニューベッドフォード。
かつて世界最大の捕鯨基地として賑わい、文豪ハーマン・メルヴィルの『白鯨』がインスパイアされたという港町から出航した巨大な底引網漁船アテーナ号。
積み込まれた11台の超小型カメラが、様々な角度・視点で底引網漁を追う。


ハーバード大学の人類学者で、映像作家でもある共同監督の二人、ルーシァン・キャステーヌ=テイラーとヴェレナ・パラヴェルは、最新の小型カメラを駆使して、我々が見たことのない映像をスクリーンに映し出す。

巨大な底引網によって海中から引き揚げられ、甲板でもがく魚のアップ。
魚を黙々とさばいていく漁師たちの作業風景。
切り落とされて無造作に転がる魚の頭。
その頭を狙って舞い降りてくるカモメ。

人間と海棲生物との関わり、淡々とした生と死の営み。
我々の日常とは明らかに異なる異質な世界が、濃厚な空気を伴って観客に迫ってくる。

そして船体から海に向かって突き出されて設定されたであろうカメラが、波に飲まれて海中に潜り、再び海上に出たかと思うと再び海中に沈み、また海上に浮かび上がり、まるで波間を泳ぐ生き物の目線の如き映像を映し出す。
それはあたかもアテーナ号の目線であるかのような感覚を引き起こし、アテーナ号が映画のタイトルそのままに「リヴァイアサン」(旧約聖書に登場する海の怪物)となって波間を漂っているかのようだ。


人間のセリフは一切ない。
船のエンジン音や網を引き揚げるクレーンの軋む音、浪にもまれてブクブクと泡が沸き立つ音など、自然な音だけが聞こえてくる。
漁師がしゃべる声が聞こえるようだが、何を話しているか聞き取れず、それもまた“ただの物音”に過ぎない存在となる。
そしてその“自然の音”が迫力の映像と相まって、我々の五感をチクチクと刺激する。


摩訶不思議な映像体験は、日常から隔離された真っ暗な劇場でこそ堪能できるもの。
文化の秋に相応しく、リヴァイアサンを追う海王神・ネプチューンの疑似体験を楽しんでみるのも一興。


リヴァイアサン
2012年/アメリカ、フランス、イギリス
監督・プロデューサー・撮影・編集:ルーシァン・キャステーヌ=テイラー、ヴェレナ・パラヴェル

首の皮

2014年10月02日 | 野球
阪神が広島との“直接対決”制す CS本拠地開催へ望みつなぐ(デイリースポーツ) - goo ニュース


タイガースが、カープとの今季最終戦に勝った。
これで“首の皮一枚”を残すことに。
2位でシーズンを終える可能性が残った。
5日に讀賣と戦うカープが負ければ、順位が入れ替わって浮上できるのである。

クライマックスシリーズ(CS)には大反対の自分なので、そのCSの試合をどこでやろうが知ったことではないが、3位でシーズンが終わるのと2位で今季終了となるのとでは気分が違うというもの。
CSを戦うにしても、ただでさえ過去のCSで勝ったことのないタイガースが、敵地広島に乗り込んで、球場全体が真っ赤に染まって見える完全アウェーな状態の中で勝てるワケがない。
試合をするからには、負けゲームは見たくないのがファン心理というもの。
CSの試合とはいえ勝ちゲームが見たいので、ここはぜひ2位で通過してもらいたい。

が、カープが讀賣に負けるしかないという他力本願の状態が腹が立つ。