スーパーには四季を問わず豊富な食材が並んでいる。
農業技術の発達によってもたらされた食材生産の工業化。
安価な食材を大量に生産できる一方で多くのリスクもはらんでいる。
鶏舎で、従来の半分の期間で2倍の大きさとなる鶏を育て、鶏肉を効率よく作ることに成功した。
しかし急激に大きくなったことでプロイラーは自分の身体を支えられず、2、3歩歩くだけで足が折れてしまう。
草地が全くない巨大農場に押し込められた牛。
本来食べるはずのないコーンを餌として与えられているため、牛の胃はうまく消化できず、それがためにO-157などの大腸菌に感染しやすくなってしまうという。
現在、アメリカの農地の30%はコーン畑。
それらのコーンは家畜の飼料だけでなく、ジュースやケチャップ、スナック菓子などあらゆる食材の原料として使われている。
そのコーンの多くは遺伝子組換捜査によって作られたものだが、アメリカも日本もラベル表示の義務はない。
もちろん工場での生産ではなく、有機農法を実践している農家もある。
J・サラティンは広い屋外の農場に牛を飼い、牧草を食べさせて育て、手作業で肉を捌いている。
本来のものである彼の農法は、決して効率の悪いものではないと彼はいう。
「利益や効率重視になると家畜を商品としてしか見なくなる。農家は美味しい食品を作ることを目標にするべきだ。」
アメリカで、オーガニック・フードが注目を浴び始めている。
大手スーパーにもオーガニック棚が出来るほどで、有機農家と提携する巨大企業が急増しているという。
しかし“企業論理”に乗って大量生産されるオーガニック・フードが、果たして本当に“オーガニック”と呼べるのか!?
第82回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にもノミネートされた、「食」についてのドキュメンタリー作品。
『ファースト・フードネーション』の原案となった「ファースト・フードが世界を食いつくす」の著者、エリック・シュローサーがプロデュースを手掛ける。
薄暗い鶏舎の中でギュウギュウ詰めにされ、ほとんど動くことなく育てられる“ブロイラー工場”は知っていたが、短期間で急激に太らされるブロイラーがいることは初めて知った。
確かに短期間で大量の鶏肉が収穫できるが、自分の体重も支えられないような鶏の肉が、果たして我々の身体にイイものなのか?
牛の飼料にとうもろこしが使われていることは知っていたが、もともと牛はとうもろこしなど食べないことを初めて知った。
それだけでなく、食べることのない“食料”であるため、牛はうまくとうもろこしを消化できないということも初めて知った。
植物を食べていれば何でも大丈夫というわけではないということを改めて知った次第だが、食文化の違う欧米人と日本人では小腸の長さが違うという話を思い出して、確かにそりゃそうだろうと納得した。
かつて狂牛病が大問題となったとき、その原因として牛に与えられていた肉骨粉が問題視され、牛に与えることが禁止されたことがあった。
この肉骨粉なるものも、当然のことながら本来牛が食べるはずのないもの。
人間他の哺乳類同様、“母乳”によって蛋白源を得て成長する牛が、その“母乳”たる牛乳を人間が搾取するため、これを補完するものとして肉骨粉が与えられたと記憶している。
安価な牛肉を供給するためのコスト削減方法として、本来口にするはずのないものを無理矢理に食べさせられて育つ牛の肉が、果たして我々の身体にイイものなのか??
そして牛だけでなく、家畜の飼料として供給されているとうもろこしは、そのほとんどが遺伝子操作によって作られたものだという。
日本では、遺伝子操作によって作られた農作物は人体への影響を考慮して敬遠されているが、食材が作られる“工程”の中で、もはやどこでどう使用されているか分かったものではない。
映画が進むにつれて、「食」に対する安心感は薄れ、信頼感は揺らぎ、不信を超えて諦めを感じる間もなく、無力感から脱力して何も感じなくなっていく気がした。
巨大企業がオーガニック・フードを扱うくだりに至っては、もはや失笑するしかない。
自分たちの健康を、いや生命を守るため、日本は鎖国して外国からの食材に関する物資の流入を一切遮断し、昔ながらの農法に立ち戻って自給自足で暮らしていかなければいけない!
本作を通してそのような考えに至ったとしても……それはただ、虚しいだけ……
「ありあまるごちそう」とセットで観ると、今までとは違った角度で拝金主義の愚かしさを実感できる。
もはや怒りさえ沸き起こらない…
「フード・インク」
2008年/アメリカ 監督:ロバート・ケナー
出演:エリック・シュローサー、マイケル・ポーラン
農業技術の発達によってもたらされた食材生産の工業化。
安価な食材を大量に生産できる一方で多くのリスクもはらんでいる。
鶏舎で、従来の半分の期間で2倍の大きさとなる鶏を育て、鶏肉を効率よく作ることに成功した。
しかし急激に大きくなったことでプロイラーは自分の身体を支えられず、2、3歩歩くだけで足が折れてしまう。
草地が全くない巨大農場に押し込められた牛。
本来食べるはずのないコーンを餌として与えられているため、牛の胃はうまく消化できず、それがためにO-157などの大腸菌に感染しやすくなってしまうという。
現在、アメリカの農地の30%はコーン畑。
それらのコーンは家畜の飼料だけでなく、ジュースやケチャップ、スナック菓子などあらゆる食材の原料として使われている。
そのコーンの多くは遺伝子組換捜査によって作られたものだが、アメリカも日本もラベル表示の義務はない。
もちろん工場での生産ではなく、有機農法を実践している農家もある。
J・サラティンは広い屋外の農場に牛を飼い、牧草を食べさせて育て、手作業で肉を捌いている。
本来のものである彼の農法は、決して効率の悪いものではないと彼はいう。
「利益や効率重視になると家畜を商品としてしか見なくなる。農家は美味しい食品を作ることを目標にするべきだ。」
アメリカで、オーガニック・フードが注目を浴び始めている。
大手スーパーにもオーガニック棚が出来るほどで、有機農家と提携する巨大企業が急増しているという。
しかし“企業論理”に乗って大量生産されるオーガニック・フードが、果たして本当に“オーガニック”と呼べるのか!?
第82回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にもノミネートされた、「食」についてのドキュメンタリー作品。
『ファースト・フードネーション』の原案となった「ファースト・フードが世界を食いつくす」の著者、エリック・シュローサーがプロデュースを手掛ける。
薄暗い鶏舎の中でギュウギュウ詰めにされ、ほとんど動くことなく育てられる“ブロイラー工場”は知っていたが、短期間で急激に太らされるブロイラーがいることは初めて知った。
確かに短期間で大量の鶏肉が収穫できるが、自分の体重も支えられないような鶏の肉が、果たして我々の身体にイイものなのか?
牛の飼料にとうもろこしが使われていることは知っていたが、もともと牛はとうもろこしなど食べないことを初めて知った。
それだけでなく、食べることのない“食料”であるため、牛はうまくとうもろこしを消化できないということも初めて知った。
植物を食べていれば何でも大丈夫というわけではないということを改めて知った次第だが、食文化の違う欧米人と日本人では小腸の長さが違うという話を思い出して、確かにそりゃそうだろうと納得した。
かつて狂牛病が大問題となったとき、その原因として牛に与えられていた肉骨粉が問題視され、牛に与えることが禁止されたことがあった。
この肉骨粉なるものも、当然のことながら本来牛が食べるはずのないもの。
人間他の哺乳類同様、“母乳”によって蛋白源を得て成長する牛が、その“母乳”たる牛乳を人間が搾取するため、これを補完するものとして肉骨粉が与えられたと記憶している。
安価な牛肉を供給するためのコスト削減方法として、本来口にするはずのないものを無理矢理に食べさせられて育つ牛の肉が、果たして我々の身体にイイものなのか??
そして牛だけでなく、家畜の飼料として供給されているとうもろこしは、そのほとんどが遺伝子操作によって作られたものだという。
日本では、遺伝子操作によって作られた農作物は人体への影響を考慮して敬遠されているが、食材が作られる“工程”の中で、もはやどこでどう使用されているか分かったものではない。
映画が進むにつれて、「食」に対する安心感は薄れ、信頼感は揺らぎ、不信を超えて諦めを感じる間もなく、無力感から脱力して何も感じなくなっていく気がした。
巨大企業がオーガニック・フードを扱うくだりに至っては、もはや失笑するしかない。
自分たちの健康を、いや生命を守るため、日本は鎖国して外国からの食材に関する物資の流入を一切遮断し、昔ながらの農法に立ち戻って自給自足で暮らしていかなければいけない!
本作を通してそのような考えに至ったとしても……それはただ、虚しいだけ……
「ありあまるごちそう」とセットで観ると、今までとは違った角度で拝金主義の愚かしさを実感できる。
もはや怒りさえ沸き起こらない…
「フード・インク」
2008年/アメリカ 監督:ロバート・ケナー
出演:エリック・シュローサー、マイケル・ポーラン