「グルメ」のカテゴリーが少ないなか、前回に引き続きまたしても「逆グルメ」に引っかかってしまった。
しかし今回は、料理が不味いということよりも、店の対応がフザけているので記録を残しておくことにする。
豚しゃぶが食いたいということで、ツレと待ち合わせたサ店を出てすぐそばにあった店に入ってみた。
メニューに「豚しゃぶ鍋」があったので。
しかし、入る前から嫌な予感を漂わせている。
地下の店に下りるための階段入口にベタベタと貼り付けられた写真。
「○○で紹介されました!」「△△に出ました!」
ウチの店は、多くのテレビ番組で取り上げられた美味しい店なんですよ!と、これ見よがしに貼りまくってある。
関西ローカルではあるが、どれもがよく知られた番組で、写真にはよく顔を見るタレントが出まくっている。
中には店長と思しき男性と一緒に並んでいる役所広司の写真も。
中に入ったら芸能人の色紙がいっぱい貼ってあるという店もよくあるが、そういうところはまあフツウの店だが、店の外、入口付近にベタベタと写真の入ったビラのような資料を貼りまくっている店は怪しい。
いぶかしくは思ったが、名物として掲げている「野菜鍋」というのも、普段野菜不足の我々の興味をそそったので入ることにした。
店に入るなり、店長らしきオッサン(さっき入口の写真に写っていた人物と思われたのでたぶん店長だろう)が出迎えた。
「いらっしゃいませ!ご予約の方ですか?」
“飛び込み”なので違うと言うと、レジ近くのしきりの中へと通された。
その席につこうとしてビックリ!
隣のテーブルにカップルが座っていたのだが、その隣との境に立てかけられたツイタテが、こっちのテーブルの端にぴったりとつけられていて、奥の席に入れないのだ。
仕方ないのでツイタテを自分でずらしてスペースをあけて、ようやく席についた。
さっきの大将(店長らしいので「大将」と呼ぶこととする)が注文を聞きにやってきた。
「いらっしゃいませ。当店は初めてですか?」
そうだと答えてメニューを見ていると、大将が話しかけてきた。
大将「当店のことはご存知でしたか?」
自分「いや、知らんかったわ」
大将「テレビでご覧になったことはありませんか?」
自分「…いや、知らんなぁ」
大将「大阪のお方ですか?」
自分「(カッチーン!)…そうやけど?」
ムッとした雰囲気が伝わらなかったのだろう、そこから大将の信じられない“噴飯トーク”が炸裂した。
東大阪でやっていたのだが評判となり、自分の店の野菜鍋が大ブレークした(大将の話によれば9年前らしいが知らんもんは知らん)。
予約をとるのも大変なくらい繁盛したので店を増やして今では6店舗ある。
店員が自分の店の自慢を、これでもかとしゃべりまくる店は初めてだったが、こんな鬱陶しいことはない。
しかもその言動には、「ウチの店を知らん、野菜鍋を知らんとは、あんたらほんまに大阪人か?」という姿勢が見えて不愉快になってくる。
席を立とうかとも思ったが、気分よく食事している隣のカップルにも悪いし、ここは大人の対応に徹することにして感情を殺した。
メニューについても実に自慢げに説明をしてくれるのを聞いていると、なんだか大将が哀れにさえ思えてきて、ふんふんと聞いてあげようという気になった。
どうやら「野菜鍋」を中心にコースになっているらしい。
で、大将が勧めるコースは完全に無視しながら、当初の目的である豚しゃぶを食べるべく、野菜鍋の豚しゃぶコースを注文した。
まずはすぐにつきだしが出てきて(「つきだし」というわけではなかったようだが、運んできた店員の話をちゃんと聞いてなかったので、よく分からない)、刺身の盛り合わせが出てきた。
まあ、どっちもまずくはない。
とりたてて美味い!というわけでもないが。
しばらくすると、名物という「野菜鍋」が運ばれてきた。
透明のスープに、チンゲンサイともやしとエノキの山盛りに、ニンジンがぱらぱら入っている。
煮立つまで待っていると、頃合を見計らってまた大将がやってきて説明しだした。
「れんげでスープをすくって一口召し上がってみてください。美味しいですから。」
…美味いか不味いかは客が決めるもの。
あんたに言われる筋合いはない。
ここでまずいと言うたら、どんなリアクションをするだろう?と興味がわいたが、大人げないのでやめることにして、“ご指導”に従った。
「熱いので気をつけてくださいね(分かってるて、うるさいな、いちいち)。どうですか?美味しいでしょう?」
…自分の店の料理が美味しいことを客に強制するこの態度は、厚顔無恥としか言いようがない気がするのは自分だけか?
とりあえず一口すすってみたが、まずくはない。
とりたてて美味い!というわけでもないが。
大将の“ご指導”は続く。
特製の(?)ダシが入った器に、鍋のスープをれんげで2杯すくって入れろとのこと。
(なぜか「れんげで2杯、2杯入れてください」とうるさい)
まずはそれで「野菜鍋」を堪能しろということらしく、ようやく大将は去っていった。
まあ、まずくはないし、野菜がいっぱい食べられるので、メニューやら壁やらにやたら書いてある「ヘルシー」の文字には偽りはなさそうだ。
鍋をつついていると、また何やら運ばれてきた。
「トンカツですー」
!!
こいつぁ驚いた!
鍋のコースにトンカツが出てくるなんて前代未聞!
結構デカいトンカツが二切れ、皿に乗って出てきた。
食ってみると、どうやらコテコテのコロモに包まれたロースかつのようだ。
おい!「野菜鍋」でヘルシーさを謳っていながら、脂満載のロースかつとはどうだ!?
脂が乗ってて美味かったが。
苦笑しながら鍋をつついていると、またまた何やら運ばれてきた。
「お好み焼きですー」
!!
トンカツの次はお好み焼き?
ヘルシーな「野菜鍋」を中心としたコースやんな?
鍋以外にトンカツとお好み焼きかい!?
どんな発想しとんねん!?
小さな丸い取り皿のような器に入った、一口サイズの小さなお好み焼き。
思い切りマヨネーズもかけられている。
「野菜鍋」のヘルシーさが吹っ飛ぶのではないか?
とりあえずお好み焼きを食ってみると、中には餅まで入っている。
ある種すごいわ。
てんこ盛りの野菜にトンカツとお好み焼きを食べると、さすがに腹がふくれてくる。
だいたい鍋が来る前に、既につきだしの類と刺身も食べているのだ。
野菜をキレイにたいらげた頃、ようやくメインテーマであるはずのしゃぶしゃぶ用の豚肉が運ばれてきた。
…が、肉の乗った皿を見てビックリ!
2人で4枚だけかい!?
とりたててデカイ肉でもない。
どう考えても、豚しゃぶを食うために入った当初の目的が達せられたとは思えない。
さっき出てきたトンカツとお好み焼きはいらんから、そっちに使ってた豚肉を1枚でも2枚でもエエからしゃぶしゃぶに回せよ!
しかし、先にも書いたようにいろんなものを食った後なので、一人2枚のしゃぶしゃぶでも、全体の食事量としてはほどほどであった。
ここまででたいがい腹がいっぱいになったところに、最後にラーメンが出てくる。
これまた食べ方を“ご指導”いただくのだが、もう書くのも面倒くさい。
完食したら満腹になった。
これで2980円なので、まあ高くはない。
しかし「ヘルシーな野菜鍋!」と主張しながら、トンカツとお好み焼きはアカンやろ。
苦笑しながら店を出た。
最後の清算時に、隣のカップルの伝票で処理されそうになるに至っては、怒り、苦笑を通り越して心配になってくる。
大丈夫か?この店。
二度と行けへんけど。
大将の対応があまりに腹が立ったので、名物というメニューはそのまま掲載した。
店の場所は、551蓬莱の北側の角を左へ曲がって、戎橋筋と御堂筋の間。
地下に下りていく店舗で、表に看板とテレビ画面を取り込んでパソコンで作ったものと思われるビラがいっぱい貼ってあるので、すぐに分かるだろう。
(さすがに店の名前は書かずにおく…ていうか忘れたし)
いやあ、久しぶりにヒドイ店に当たったが、店に入るときの嫌な予感を、これからはもっと大事にしていきたいと決意を新たにした。