御朱印、ネット転売横行で神社困惑 「罰当たり」と批判も
令和への改元後の連休中、全国各地の神社には改元を祝う参拝客らが大勢詰め掛けた。他方、神社でもらう御朱印や御朱印帳がインターネット上で転売され、神社側は困惑。ネット上でも「御利益どころか罰当たりだ」「他人がもらった『参拝の証し』を買って何になるのか」などと批判が上がっている。【待鳥航志/統合デジタル取材センター】
御朱印セットで5万円も
改元の5月1日以降、各地の著名な神社には天皇陛下の即位を祝福する参拝者が殺到。東京都渋谷区の明治神宮は「御朱印を求める方は例年の連休の倍以上」(広報担当者)と話し、一時は10時間待ちの行列ができた。三重県伊勢市の伊勢神宮でも1日から6日までの参拝者数が約56万4000人に上り、昨年の約26万4000人から倍増。厳島神社がある広島県廿日市市の宮島には1、2日に昨年より6万人以上多い約9万人が訪れ、御朱印を求める人であふれた。
近年、「御朱印」集めのブームが続く中で、改元後はネット上に御朱印や御朱印帳の出品が続出。フリーマーケットアプリ「メルカリ」には、御朱印やその関連品を含め2300件以上(7日午後現在)の出品があった。伊勢神宮で「お気持ち」の300円ほどでもらえる御朱印と、2500円の御朱印帳がセットで出品され、5万円で購入されたケースもあった。
ネット上では「スタンプラリーじゃない」「買う方も買う方だ」といった批判が上がり、関東地方の神社関係者は「御朱印は参拝の証しとしてお受けするもので、本来はネット上でお求めになるものではない」と苦言を呈する。
ブームで消費の対象に
御朱印や御朱印帳の転売を巡っては2017年、茨城県内の神社関係者がツイッター上で「許せません」などと投稿したのが拡散し、ネット上で議論になったことも。佛教大の大谷栄一教授(宗教社会学)は「御朱印は本来は参拝の証しとしてもらうことに宗教的な価値があるのに、その物自体に価値を見いだされるようになり、ブームの中で消費の対象とされている」と話す。若い女性の間の神社ブームを取材したノンフィクション作家の野村進さん(62)は「参拝者たちの多くは縁結び祈願などで真剣に参拝している。ネットで買ってまで集めている人はごく限られているのではないか。ブームにはつきものだが、転売は望ましくない」と指摘する。