「何をやらせても諦めない」2年で“日本一の左官”勝ち取った若き女性 その原点とは【愛媛発】
若手日本一! 20歳の女性左官
コテを駆使して壁や床などを塗り仕上げる「左官」は、日本が誇る建設の専門職人。
多彩な技術や工法は現代に受け継がれ、わたしたちの周りの身近な建物でも見ることができる。
そんな職人の世界に魅せられた、若い女性がいる。
吉村静流さん。
愛媛県松山市の建設会社で働く、20歳の左官。
吉村静流さん:
毎日練習していくうちに、自分ができるようになっていくのがわかる。自分の技術が上がっていくのがわかるっていうのが、(仕事の)魅力を感じる
松山工業高校出身の吉村さん。
左官になって2年だが、建設業界では注目の若手技能者。
その理由は、2019年11月に、愛知県で開かれた技能五輪全国大会。
23歳以下の若手が、さまざまな職種の技術や能力を競う大会で、吉村さんは左官職種に初めて出場し、見事 金賞に輝いた。
愛媛県の選手が左官職種で日本一になったのは37年ぶりで、女性としては初の快挙。
吉村静流さん:
自分が納得するまで練習していたので、緊張は最初だけで、あとは自分のペースを乱さずに落ち着いてできたと思います
「現代の名工」が語る 吉村さんの持つ“力”
吉村さんが勤める建設会社の技術顧問で、「現代の名工」でもある、濱﨑組・松岡弘志さん(75)。
キャリア60年の左官職人で、吉村さんを高校生のころから指導している。
松岡弘志さん:
吉村さん、これは何のためにクシをかくんですか?
吉村静流さん:
これは、また上に塗る時に食い込みをさせるためです
松岡弘志さん:
そうですね、ここにいかにモルタルが食い込んでくれて、はく離がないように
松岡弘志さん:
第一印象としては、丁寧さと器用さとスピード感。ものづくりに対してはいいところまでいくと思った。粘り強いですよ。何をやらしても諦めずにやり遂げる
吉村静流さん:
ものづくりに興味を持ったのは、幼稚園の時。自分の家が建つのを見て、すごいなって思ったのがきっかけ。松岡さんと出会って、技術の素晴らしさに魅了されて、自分も左官になりたいと思ったのが、1番のきっかけ
技能五輪では、課題の図面をもとに、石膏や塗り壁を組み合わせたモジュールを作成。
仕上がりの美しさや精度などが評価された。
その中の自由課題で吉村さんが描いたのが、火の鳥。
吉村静流さん:
火の鳥ですね。道後温泉と手塚治虫さんがコラボしているやつです。
今、わたしが実際に携わっているので、道後温泉本館の保存修理工事に。愛媛をアピールできたらいいなと思って
左官職人の高齢化や担い手不足が全国的な課題となる中、吉村さんが働く建設会社では、高校への出前授業やインターンシップなどを通じて、若い世代に、ものづくりの魅力を積極的に発信している。
濱﨑組総務部・田村一至次長:
将来も、今と同じように建築物を作らないといけないし、これから日本の建物を残していくためには、技能工の育成を、会社としてもしていかないといけない。吉村さんみたいになってみたい若者が、1人でも増えればな、というふうに考えています
技能五輪金賞は、一人前の職人になるための大きな一歩。
吉村さんのこれからの目標は?
吉村静流さん:
現場で活躍できる職人になりたい。次にすることがわかるとか、この人が今そういう仕事をしているから、自分が動いておけばその人が楽とか、そういうことを考えられるように
愛媛の「ものづくり」を担う若き左官。
挑戦は、始まったばかり。
(テレビ愛媛)