県は20日、総額5609億円となる2020年度の一般会計当初予算案を発表した。知事選があった19年度の6月補正後予算より336億円(6・4%)増加し、02年度以降で最高額となった。19年度の一般会計2月補正予算案108億円とあわせて26日開会の県議会に提出する。

 歳出では県道路公社の解散に伴う清算金収入の一部(253億円)を将来の事業のための地域・経済活性化基金に積み立てた。県債管理基金から150億円を繰り入れ、国が本来交付すべき財源を補うために発行する臨時財政対策債の返済に充てた。これらが総額を押し上げた。県財政課の担当者は「財政健全化を進めるため」と説明する。

 このほか非正規公務員の新しい制度「会計年度任用職員」の開始などで、人件費が15億円(1・1%)増加。後期高齢者の医療関係費の増加や幼児教育の無償化などで社会保障関係経費も32億円増加した。

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 インフラの整備では大和川の治水対策に45億円、各地の砂防施設整備などに68億円を計上し、災害対策に注力する。県立高校など県有施設の耐震化は33億円。五條市に計画中の大規模広域防災拠点整備は2億円を盛り込んだ。

 観光やまちづくり事業では天理市に整備中の「なら歴史芸術文化村」に、前年度の62億円に続き30億円を投じる。平城宮跡東側に整備を計画する「歴史体験学習館」には6億円を計上。正倉院宝物の復元模造品の展示などを検討している。4月開業の県コンベンションセンターの運営関連費には2億円を計上し、国際会議やイベントなど「MICE」の誘致に取り組む。

 歳入ではふるさと納税による税額控除額の増加などで、個人県民税が5億円(1・1%)減少した。一方、消費増税や法人の業績が堅調に推移したことで、県税・地方消費税清算金・地方譲与税などの主要な一般財源は123億円(3・4%)増加した。県の借金にあたる県債の発行額は7億円(1・1%)減り、634億円。県債残高は9910億円(20年度末見込み額)で、08年度以来12年ぶりに1兆円を下回った。県民1人あたりに換算すると約75万円となる。

 19年度との比較はいずれも6月補正後予算に基づく。(根本晃)

歳入・歳出の用語(円グラフ参照)

県税 個人県民税が4割を占め、法人事業税や地方消費税が続く

地方交付税 自治体間の行政サービスに差が出ないよう、国が集める所得税法人税の一部を、自治体の財政力に応じて配る。自治体の裁量で自由に使える

国庫支出金 国が使い道を特定し、自治体の防災対策など公共事業に補助金として支給する

扶助費 生活保護費や児童手当など

投資的経費 道路や公共施設の建設などインフラ整備にかかる費用。なら歴史芸術文化村や大規模広域防災拠点の整備事業などが含まれる

補助費など 介護や障害者自立支援など社会保障関係費、私立高校への補助金、県内市町村への県税交付金などに使われる

物件費 奈良まほろば館とときのもりの統合・移転事業などが含まれる

◇県フォレスターアカデミー開校準備(3億600万円)=地域の森林環境管理を担う「県フォレスター」を養成する「県フォレスターアカデミー」を2021年4月に開校予定。現県立吉野高校舎を改修して使用する。24年度までに県フォレスター10人を県職員として県内市町村に配置することを目指す

◇奈良まほろば館・ときのもり移転整備(2億1300万円)=東京・日本橋のアンテナショップ「奈良まほろば館」と同白金台のレストラン兼ショップ「ときのもり」を統合し、同新橋に新拠点を整備。21年4月開業予定

平城宮跡歴史公園駐車場整備(2億円)=平城宮跡歴史公園南側の工場跡地の一部に来園者用の駐車場を拡充整備する。奈良公園バスターミナルの駐機場としても活用を検討する

◇出所者更生支援(3700万円)=出所者らを直接雇用する財団法人を県が設立。民間企業に派遣して就業実習の機会を提供する

こども食堂支援(350万円)=県内の全小学校区にこども食堂がつくられることを目指し、食堂の開設・継続を支援するコーディネーターを県が配置する