「へいわってすてきだね」。日本のいちばん西にある、沖縄県与那国島。そこの当時6歳だった少年が書いた詩が、絵本になった。昨年6月23日、糸満市であった沖縄戦の全戦没者を悼む式典で、本人が読み上げた。素直な言葉が、大人たちを動かした。

 詩をつくったのは安里有生(あさとゆうき)君(7)。いまは父親の転勤で島を離れ、本島中部の沖縄市に住む。1年前はひらがなを習いたての、与那国町立久部良(くぶら)小1年生だった。島の豊かな自然で、平和のよさを表した。

 《ねこがわらう。おなかがいっぱい。やぎがのんびりあるいてる。けんかしてもすぐなかなおり。ちょうめいそうがたくさんはえ、よなぐにうまが、ヒヒーンとなく。》

 絵をつけたのは、人気絵本作家の長谷川義史さん(53)=大阪市北区。丸めがねに柔らかな関西弁。テーマは一貫して「生まれてきて、生きているだけでありがたい」。ダイナミック、そしてユーモアたっぷりに描き上げる。「今、やらなきゃ」。詩を読んですぐ、覚悟を決めた。

 与那国島も訪れた。真っ青な海、広い空。恥ずかしがり屋の安里君とは二言三言しか言葉は交わさなかった。でも、平和であってほしいという願いは「話さずとも感じ合えた」。

 下書きせずに、詩の素直な表現を真正面から逃げずに描く。失敗した紙は山のように積み上がり、完成まで1カ月かかった。2000年のデビュー後、100冊以上を描いてきたが、一番苦労した一冊になった。

 《やさしいこころがにじになる。へいわっていいね。へいわってうれしいね。みんなのこころから、へいわがうまれるんだね。》

 長谷川さんは言う。「平和のために戦いに行くなんて、そんなことから平和は生まれへんねん。優しい心からじゃなきゃ。それを安里君が教えてくれている」

 《ああ、ぼくは、へいわなときにうまれてよかったよ。このへいわが、ずっとつづいてほしい。みんなのえがおが、ずっとつづいてほしい。》

 絵本「へいわってすてきだね」は、今月23日の沖縄の「慰霊の日」にあわせ、全国で順次、ブロンズ新社から発売される。税抜き1400円。(牛尾梓)

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