レースとリボンだらけのネグリジェを見た母は「あらっ!」と言ったきり、しばし絶句していた。
「もったいないから着てみたら?」
そう言われてしぶしぶ私は、Tシャツの上からネグリジェを着てみた。
まるで肩が落ちそうなくらい、襟ぐりが大きく開いていて、そこにレースが二重、三重についていて、中央にはピンクのリボンだ。
そして透ける身ごろはギャザーの三段切り替えになっていて、そこにも、これでもかというくらいに、レースとリボンがあしらってあった。
「あら!!」再び母は絶句しつつ、笑いころげていた。
段々ギャザーの透け透けネグリジェを着た私は、まるで松ぼっくりそのものだった。
「女の子だったら、みんなこういうのが好きだと思っているのね。娘さんがいないからしょうがないんだけど、これは、ちょっと違うわねぇ」
母はネグリジェのタグを、もう一度確認しながら、「フランス製なんだけどねぇ、これじゃあねぇ」と何度も繰り返しながら暗い顔をしていた。
私に似合うというよりも、医者の奥さんが、そういったふりふり趣味の人だったのだろうけれど、こんな透け透けのネグリジェなんか、こっぱずかしくて着られない。
一応、奥さんにはお礼は言ったものの、押し入れの引き出しの奥深くしまいこんでいた。
しかし母は「もったいない、もったいない」と言う。
あんなに私には似合わないし、趣味ではないとわかっていながら、「もったいない」を連発したのである。
娘に似合わないのは重々わかっていながら、放ってあるネグリジェを思うと「もったいない」は体の奥からじわじわと、わきでてくるみたいなのだ。
「どうせ外に着てでていくわけじゃないんだから着たら?」遠慮がちに母は言った。
「やだ!」
つっぱねると彼女は「それはわかるけれど、もったいない」と自分の部屋に持って行った。
そして「私が着ようかしら」と言って試着したが彼女の姿には、私以上にすさまじいものがあった。
それ以来、そのネグリジェを見ていないが、きっとまだ捨てずに持っていると思う。
つづく
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