沖縄で初のシュノーケリング初日。
天候は曇天のち雨予報。
海中でのパンをばら撒いた途端に集まってくる魚たちの美しい姿に魅入ってしまったものの、ほっとした途端、どーーんと深くなった部分が目に入った。
又、不安が私を襲った。
シュノーケルをやっていると、自分の呼吸音が聞こえる。
シュノーケルを口から離さない限り、息は出来る。
そういう状態が水中で楽なのは当たり前なのだが、その当たり前が不安につながるのだ。
「ああっ、鼻で思いっ切り息をしたい!!」私は急いでボートに戻り、
足をかける船尾のステップにつかまり、
ゴーグルをずりあげて「はぁはぁ」と鼻と口で思いっきり息をしてやっとひと心地ついたものの、ものすごい虚脱感に襲われた。
生まれて初めての事をやるのは、この歳になるとなかなかきつい。
いくら係員の青年に「ライフジャケットを着て居るから大丈夫ですよ」
と言われても、ダイバーが潮に流された事故などが頭に浮かび、
波もない穏やかな海だというのに
「ううむ、自然では何が起こるかわからんぞ」と警戒しまくるのだ。
このまま、ずっとステップにつかまっていようかとも思ったが、
又、海の中を見たくてバタバタと泳いでいった。
自分の思っている以上にボートから離れた私は
「えらいこっちゃ」と慌ててUターンする。
ボートの位置を中心に半径10メートルの区域の間を行きつ戻りつしていたのであった。
そのうち私はぐったり疲れてきた。
ウエットスーツを着ているとはいえ、海の中で体は冷えきり、おまけに雨も本降りになってきた。
私はまたまた得意の「船尾のステップしがみつき作戦」に出たが、
今回は二度とステップから手を放したくなかった。
時間にして15分か20分だったにもかかわらず、
けだるくて動く気になれない。
何よりも疲れたのは脚でも腕でもなくアゴだった。
シュノーケルが私の呼吸を支えている唯一の道具だったので水中を見ている時に必死にくわえすぎていたらしいのである。
つづく
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