30代の頃、滅多に母と外出しない私だけれど、何かの用事があり、久しぶりに外で待ち合わせをした。
ある場所で待ち合わせたのだが、その姿を見て私は、慌ててその場から立ち去りたくなってしまった。
髪の毛は母がしたいと言っていたシニョンという、ひとまとめにして結い上げた、いわゆるおだんごヘアなのだが、着ている服一式が、全て私が高校、短大の時に着ていたものばかりだったのである。
シャツはブルーの地に白い細かいチェック。
これは高校1年の時に私が縫ったものの、あまりに、ひどい出来だったので見るのも嫌で押し入れに突っ込んでいたものだ。
下半身は短大の1年の時に愛用していたストレートのジーンズ。
もちろん嫌になるほどはいたから、膝のあたりは白っぽくなっている。
そして、お揃いのジーンズのジャケットも私が短大の時に飽きるほど着ていたものだった。
例えばそれを若いぴちぴちした女の子が着ているのならまだしも、60歳を過ぎた初老の女性が着ている姿を想像してほしい。
おまけに髪型は着物をいつも着たいからといって、普段しているシニョンである。
ミスマッチすぎるミスマッチに私は愕然とし、思わず私は知らんぷりをしようとしたくらいであった。
「なーーに、それ」あまりの姿に私はぶっきらぼうに言った。
母は自分の着ているものをひととおり眺めたあと、「まだ、着られるよ」と言った。
「それはわかるけど、その髪型にその恰好はあんまりだ」と説教をすると彼女は憮然としながらも「だってもったいないじゃない」と言い放った。
母の「もったいない攻撃」にあうと、こちらとしては黙るしかない。
実家にも押し入れには山のような荷物がためこんである。
それも端切れとか、もう着なくなった服とかばかりである。
それを一体どうするのかと聞くと、リフォームするという。
しかし現実にはそんな気配はなく、着られそうなものをそのまんま着ている。だから仰天するようなスタイルで現れるのである。
つづく
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