第5回 東電旧経営陣公判
業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人の第5回公判が4月10日、東京地裁(永渕健一裁判長)で行われた。今後20人を超える証人を呼ぶ集中審理が行われる。
そのトップに立ったのが事故前に津波の試算を担当していた東電社員だった。
「元副社長の武藤栄被告(67)らが津波対策を先送りした」とする検察管役の弁護士の質問に対し「先送りは予想外だった」と述べた。
この社員は2007年以降、第一原発に到達する想定津波の高さを試算する社内グループに所属していた。
同グループでは政府の「地震調査研究推進本部」が「福島県沖を含む日本海溝沿いに巨大津波が発生しうる」とした長期評価に基づき、東電子会社に試算を依頼していた。
この子会社は2008年、最大15.7㍍の津波が到来すると試算していた。
同社員は法廷で、「長期評価」について「主要な地震学者が支持しており、津波対策を取り入れるべきと考えいた」とも証言した。
そして、社内の別のグループに対し「第一原発などの大幅な改装工事が行われることは確実」とメールしていたことも明らかにした。一方、武藤栄元副社長に試算結果を報告したところ「最初は防潮堤設置に向けた」と思われる指示も受けていたとも証言した。
ところが、その後「津波工事対策ではなく『長期評価が正しいかどうかの研究を実施しよう』と方針を一転させられた。そして「津波対策の大幅な改装工事を進める方向だと思っていたので、予想外の事で力が抜けた」と重大な証言をした。
検察官役の弁護士は「東電の社員が津波対策に奔走しようとしていたが、武藤元副社長ら旧経営陣は津波対策の大幅な改装工事を先送りした」と主張。
武藤元副社長らは「先送りしたわけではない」と反論している。次回は同11日である。